バイデン政権、NATO加盟国にF-16のウクライナ移転を許可すると伝達

[ad_1]

CNNは「バイデン政権はNATO加盟国に対してウクライナへのF-16移転を許可する意向を伝えた」と報じているが、欧州諸国の本音は「戦闘機提供を支援する立場に収まりたい」なので、ウクライナへの戦闘機提供が実現するかは未知数だ。

誰がウクライナに機体を提供するのか、誰が提供にかかる費用を負担するのか

CNNは政府関係者の証言を引用して「バイデン政権はNATO加盟国に対してウクライナへのF-16移転を許可する意向を伝えたが、まだ同盟国から移転に関連した承認手続きを要請されたことはなく、これを審査する国務省のスタッフも承認手続きの仕事に取り掛かるよう指示されていない」と報じており、ウクライナへの西側製戦闘機の提供は欧米間の政治的駆け引きに発展している感がある。

バイデン政権、NATO加盟国にF-16のウクライナ移転を許可すると伝達

出典:U.S. Air National Guard photo by Tech. Sgt. Hollie A. Hansen/Released

パイロットの訓練問題はひとまず置いておくとして、ウクライナが要求する「西側製戦闘機の提供」の実現を妨げている要因には「誰が機体を提供するのか」「誰が提供にかかる費用を負担するのか」という問題が確実に絡んでおり、先に結論を述べておくと米国は「ウクライナが戦争継続のため必要とする資金、装備、弾薬の大半を負担しているので戦闘機提供は欧州主導でやってくれ」と言うのが本音で、欧州は「ウクライナに引き渡す戦闘機をF-16に限定することで欧州は提供を支援する立場に収まりたい」と願っている可能性が高い。

そもそもウクライナが希望しているのは「西側製戦闘機」であって「F-16」である必要はなく、もしF-16の入手が難しいなら「ラファールやグリペンでもいい」とウクライナ空軍は述べており、米国は保有するF-16の提供に消極的なので、西側製戦闘機の提供に積極的な欧州諸国が保有する機体をウクライナに提供すれば、仮に政治的な問題で米国製戦闘機(F-16やF/A-18)の移転承認が困難なら欧州機(タイフーン、ラファール、グリペン)を提供すればいいだけだ。

バイデン政権、NATO加盟国にF-16のウクライナ移転を許可すると伝達

出典:mashleymorgan / CC BY-SA 2.0

要するに英国が主導する戦闘機提供の連合体が「F-16」に提供機種を限定するのは「誰が機体を提供するのかという問題の矛先を米国に向ける・巻き込む」という政治的な意図があり、最も戦闘機提供に積極的な英国は「我々にはウクライナが希望するF-16を持っていない」というロジックで機体を提供する立場にないと主張、メディアが政府の報道官に「F-16の代わりにタイフーンを提供する用意はあるのか」と質問すると「提供するつもりはない」と断言している。

連合体への参加を示唆したベルギー政府も「2023年末まで2機のF-16が退役予定だが、これは既存機の維持=スペアパーツ取りに利用するため提供可能な機体を持っておらず、F-16の運用経験からパイロットの養成に協力できる」と、ポーランド政府も「F-16提供を支持するが提供は難しい」と、F/A-18C/Dを運用するフィンランド政府も「代替戦闘機の供給が約束されるか、F-35Aで更新するまで手放せない」と、スウェーデン政府も「グリペンに余剰の機体がないため提供は不可能」と述べており、戦闘機提供を支持する国は「取り組みを支持しても機体は提供できない」という立場だ。

バイデン政権、NATO加盟国にF-16のウクライナ移転を許可すると伝達

出典:Radafaz / CC BY-SA 3.0

最も可能性があるのは2024年末に運用が終了するオランダ保有分のF-16なのだが、この機体の一部はアグレッサーサービスを提供するDraken Internationalに売却する契約が成立しているため、ウクライナに回せる機体の数は10機前後で、ノルウェーもF-35Aへの更新が完了してF-16がサービスから外れたばかりだが「ルーマニアへの売却」が決まっており、欧州諸国に余剰分のF-16は存在しない。

この理屈は米国も同じで「F-16を約800機も運用してるので少しぐらいウクライナに回せるだろう」と思うかもしれないが、米空軍がカバーする作戦空域は非常に広いのに作戦機は最盛期の半分以下(4,468機→約2,000機)に減少、さらにプラットホームの老朽化に伴い「メンテナンスにかかる時間」が増加しているため機体の運用状況に余裕がなく、ウクライナ空軍がロシア空軍に対して「一定の影響力」を確保するには西側製戦闘機が最低でも50機程度は必要と言われている。

バイデン政権、NATO加盟国にF-16のウクライナ移転を許可すると伝達

出典:U.S. Air Force Photo by Senior Airman Tristan Biese

デビスモンサン空軍基地で保管されているF-16を「再整備してウクライナに提供する」というアイデアも実現性に乏しい。

非常に高い確率で再就役すると予想される航空機はType1000に指定され「飛行が可能な状態」を維持したまま保管されているため「120日以内の再就役」が可能だが、Type1000指定は墓場に持ち込まれる航空機の10%以下(F-117やB-1Bなど)で、2019年に墓場から運び出された野ざらしのB-52Hは再就役までに2年間の歳月を要しており、そもそも50機のF-16を再整備しろとロッキード・マーティンに命じてもラインの構築から行う必要があるため年単位のリードタイムが発生するだろう。

バイデン政権、NATO加盟国にF-16のウクライナ移転を許可すると伝達

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Amber Porter/Released

英国は他国に先駆けて「チャレンジー2提供」を発表することで米国とドイツを動かし、政治的に「西側戦車を提供する流れ」を作り出すことに成功したが、米国は「NATO加盟国が保有するF-16移転を容認している」と明かし、ドイツも「戦闘機提供は我々の考える支援から外れている」と距離を置いており、個人的に「戦闘機を提供する国を支援するので西側戦闘機をウクライナに提供できる国は名乗り出てくれ」「でも英国はタイフーンを出せません」というロジックでは流石に厳しいと思っている。

もし他国を動かしたいなら英国がタイフーンを提供して見せるべきだろう。

追記:EUのミシェル大統領は「G7でF-16のウクライナ移転問題を話し合う予定だ」と明かした。

英国がウクライナにチャレンジャー2提供を伝達、ドイツとの政治的な駆け引き
米空軍が保有する戦闘機の在庫は過去最低水準、老朽化は過去最高水準
成層圏の要塞が「飛行機の墓場」からカムバック!保管中のB-52が現役復帰
ルーマニアがノルウェーから中古F-16取得を発表

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo/Tech. Sgt. David Salanitri

[ad_2]

Source link