電気自動車(EV)で後れを取っていたトヨタ自動車が、今年1月に最高経営責任者(CEO)を電撃交代し、4月にEVへの転換を宣言したのに続き、今回はEV市場の「ゲームチェンジャー」とされてきた全固体電池の量産計画を発表した。
しかし、依然として内燃機関時代の業界最大手のトヨタが、EV時代においても「優等生」になり得るかははっきりしない。量産予定時期がライバル社に比べて早いとはいえないからだ。ただしこの日、東京証券市場でトヨタの株価は急騰した。
トヨタは8日に静岡県の研究所で開かれた「トヨタ・テクニカル・ワークショップ」で議論された内容を、13日公開した。同ワークショップはトヨタの最高技術責任者(CTO)などが参加し、EVへの転換など新しい戦略を話し合う場だった。ワークショップのテーマも「クルマの未来を変えていこう!」だった。
最も注目を集めたのは、全固体電池が装着されたEVの量産時期。トヨタは同日公開した資料で、その時期を2027~2028年と明示した。トヨタは「(全固体電池を)大量生産する技術を向上させている」と明らかにした。現技術レベルでは全固体電池の製造費用が現在のEV電池の主流であるリチウムイオン電池に比べ4~25倍になることを考えると、今後3~4年以内に価格競争力のある水準まで製造技術を引き上げられるという自信をのぞかせたのだ。日本経済新聞は「トヨタが全固体電池を商用化すればEV市場の勢力図を塗り替える可能性がある」と見通した。
全固体電池は固体であるため、爆発や火災の危険性が低く、様々な形で製作できるというメリットがある。エネルギー密度も高く、EVの走行距離を画期的に伸ばすことができる。 全固体電池がゲームチェンジャーになるといわれてきたのもそのためだ。トヨタも自社のEV「bZ4X」にこの電池を搭載すれば、一度の充電で1200キロメートルを走行でき、充電時間も10分以下に減らせると説明した。
トヨタはドイツのフォルクスワーゲンと共に世界1~2位を争う完成車メーカーだが、EV分野では存在感が薄かった。現在販売しているEVモデルも1台だけで、販売実績も微々たるもの。800万台まで成長したEV市場で、昨年トヨタが販売したEVはわずか2万台に過ぎない。「プリウス」に代表されるハイブリッド車に力を入れすぎたため、市場の変化に素早く対応できなかったのではないかと酷評される理由だ。
トヨタはこの日意を決して勝負に出たが、市場の反応は薄い。トヨタが提示した量産計画の時期は、ライバル社より早いとはいえないからだ。実際、LGエナジーソリューションやサムスンSDI、中国のCATLなども全固体電池の量産計画時期を2026~27年とし、ほぼ同じ時期に予定している。
東京証券市場に上場されたトヨタの株価は同日、5%余り急騰したが、その意味を高く評価するのは難しいという見方もある。匿名のある韓国証券会社のアナリストは「(ニューヨーク証券市場に上場されている)テスラの株価もともに急騰した」とし、「トヨタの発表が破壊力のあるものなら、ライバル社の株価は揺らいだはずだ」と指摘した。
もちろんトヨタは計画を予定通り進めることで定評があり、全固体電池関連の技術特許などを最も多く保有しているメーカーであるため、トヨタの底力を無視できないという見方もある。トヨタは2021年、世界で初めて全固体電池EVの走行映像を公開したこともある。韓国の完成車メーカーのある関係者は「日本は素材・部品産業の競争力はもちろん、製造競争力もずば抜けて優れている。トヨタのロードマップを過小評価することはできない」と語った。
チェ・ウリ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )