
鹵獲(ろかく)されたロシアの装甲を修理する作業員
(CNN) ウクライナの秘密の場所に戦闘で破損した戦車や歩兵戦闘車などを修理、あるいは改良して再び戦場に送り返す「倉庫」がある。
【画像】鹵獲されたロシアの装甲兵員輸送車。「Z」のマークが見える
大型エンジンをたたき続けるなど大きな金属音が鳴り響くこの「兵器再生工場」で働くのはごく普通の民間人だが、ウクライナの抗戦を支える重要な使命を担っている。CNNは彼らの安全を確保するため氏名を明かさないことに同意した。
キャタピラー部分が無残にねじまがるなどした車両があった。地雷を踏んだロシア軍の車両だった。車体の至る所に侵攻したロシア軍を象徴する「Z」印が記されていた。
倉庫を管理する組織の責任者によると、輸送用車両だったがこれを負傷兵などを搬送する医療用車両に改造する作業が進められていた。より大型にし、車内で座りやすい場所をより多くする工夫を試している。
倉庫では十数台の装甲車両の修理などが行われていた。兵員輸送車、歩兵戦闘車両に戦車などだ。修理だけではなく、戦場での防御機能や操縦での快適性をより高める改良にも努めている。
西側諸国はここに来てウクライナへの兵器提供を拡大しているが、ウクライナ軍は侵攻を受けた当初、保持していたロシア製装備品を用いての防戦に頼らざるを得なかった。ロシア軍から奪った兵器なども含まれていた。
同責任者は、倉庫での作業で最大の課題の1つは部品の入手と認めた。例え小さな部品でも手元になければ問題が生じると明かした。
ウクライナ軍と協力してこれらの部品調達を図っているが、不可能なら自分たちでつくり出しているとも話した。時間がかかり色々な手間も要する作業としたが、最終的には活路を見い出したとも誇った。
修理可能となった車両は30種以上とし、欧米製のものも含まれるとした。「詳しくは言えないけど」ともすぐにつけ加えた。
ウクライナのゼレンスキー大統領は最近、長らく予想されていた領土奪還のための反転攻勢が始まったことを宣言した。CNNが取材した時期に、倉庫では十数台の車両の修理などを手がけているが、ほかの時期と比べれば忙しさは大幅に減じたという。
倉庫で働く人々は反攻に踏み切る前の「嵐の前の静けさ」を予感していた。
倉庫の入り口には前線への復帰を次に控える装甲車両の姿があった。ロシア軍の主力戦車「T72ーB3M」だった。ほとんど新品に見えた。
指図でエンジンがかけられると倉庫内に排気ガスが満ちた。力強い駆動の音響に倉庫内の作業が止まり、働く人々の視線がこの戦車に集まった。責任者は「戦線に送り出す準備が出来た」と言い切った。