【令和の未来 参院選政策を問う】農業・票争奪へなりふり構わぬ自民 野党は補償復活を柱

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【令和の未来 参院選政策を問う】農業・票争奪へなりふり構わぬ自民 野党は補償復活を柱
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 梅雨とは思えぬ青空に包まれた10日の山形県尾花沢市。首相(自民党総裁)の安倍晋三は、街頭演説の合間に若手畜産農家との対話集会に駆け付けた。ブランド品「雪降り和牛」をおいしそうにほおばった後、日米貿易交渉をめぐる米国産牛肉の関税引き下げに対する懸念にこう答えた。

 「トランプ米大統領と(引き下げ幅は)過去の交渉が最大と約束した。日米の閣僚だけでは心配なので首脳会談でもう一度約束した。絶対大丈夫だ」

 「過去の交渉」とは、11カ国で締結した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を指す。参加国産の牛肉は、関税を締結前の38・5%から段階的に9%まで引き下げることが決まっているが、交渉から離脱した米国は日本にTPP以上の引き下げを求める、との不安が広がっている。

 安倍が農家と丁寧にやりとりしたのは、長年自民から農業団体の票が離れた苦い経験も踏まえている。

■12年ぶりの推薦

 全国農業協同組合中央会(JA全中)の政治組織「全国農業者農政運動組織連盟(農政連)」は今回の参院選で、山形選挙区(改選数1)の自民候補を推薦した。山形での自民の参院選候補推薦は12年ぶりだ。

 JAグループは自民の強固な支持層だったが、平成24年の政権復帰後もTPPへの不満がくすぶり、28年参院選では東北6県中、5県の農業系団体が自主投票とした。自民候補は東北で山形を含む5県で敗れた。

 自民が農業票回帰の切り札とするのは輸出拡大戦略だ。日本の農産品は海外で需要が高く、30年の農林水産物・食品の輸出額は9千億円を超えた。令和元年に輸出額1兆円との政府目標も現実味を帯びている。政府は官房長官の菅義偉(すが・よしひで)が司令塔となり、来春にも農水省に各国との交渉から輸出審査まで一元的に担う組織まで立ち上げる。

 4月18日夜。安倍と党幹事長の二階俊博らはJAさがが経営する東京・銀座のレストランで、JA全中会長の中家徹と向き合った。

 二階は幹事長就任後、日本産米の中国への輸出拡大を進めてきた。中国の年間のコメ消費量は日本の20倍以上ある。二階の直談判もあり、中国は昨年5月、日本国内の輸出用精米工場2施設と燻蒸(くんじょう)倉庫5施設を認可し、山形でも酒田市の倉庫が認可された。

 「誠意の示し方ってあるんだよね」

 二階は席上、中家の腕をつかみながらつぶやき、さらにこうたたみかけた。

 「今度訪中するが、習近平国家主席との会談に、ぜひ農業関係者の代表にも出席してほしい」

 中家は早速、4月末の訪中に全国農業協同組合連合会(JA全農)会長の長沢豊を同行させた。長沢はJA山形中央会の会長も兼務する。二階が個別に連絡を取った長沢は今月4日の参院選公示日、自民候補の演説会にも顔を出した。党県連幹部は「これまで自民の集会にはほとんど出席しなかったのに…」と舌を巻いた。長沢は演説会で、吹っ切れたようにこう訴えた。

 「政権政党は安定していなければ国民の生活につながらない」

■中長期的制作見えず

 野党側も必死に農業票をつなぎとめようとしている。立憲民主や国民民主などの主要野党は公約で、農家の生産コストの赤字分を国が補填(ほてん)する戸別所得補償制度の復活を柱に据えた。「ばらまき」とも批判されるが、直接的な援助を望む声は農家に根強く残る。

 野党は、トランプが5月の日米首脳会談の際「8月に大きな発表ができる」とツイートしたことも追及する。立民代表の枝野幸男は「TPPのレベルを超える大幅な譲歩の密約があったと言わざるを得ない」などと攻勢を強める。

 就農人口は令和元年に170万人を割り込んだ。南陽市の農家の男性(54)は「農業を守るための中長期的な政策が見えてこない」と嘆く。与野党の政策は、まだ農家の心に響いているとは言いがたい。=敬称略(大島悠亮、八倉陽平)

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