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立てこもり発砲事件の容疑者が立てこもるアパートに強行突入するSITの捜査員ら=平成19年4月、東京都町田市
長野県中野市の立てこもり事件には、地元長野県警だけでなく警視庁捜査1課特殊班(SIT)と神奈川県警の特殊急襲部隊(SAT)も投入された。これまでの同種事件でも、管轄地域の「壁」を超え、SITやSATは地元から要請がなされ出動してきたが、地元県警だけで完結はできないのか。その背景にはSITとSATが持つ高い専門性と練度、豊富な資機材に加え、事件の少ない地方での人員確保の難しさといった事情も絡んでいる。
【写真】公開された警視庁捜査1課特殊班(SIT)の訓練
■刑事部のSITと警備部のSAT
SITは警視庁刑事部に所属する誘拐や人質立てこもりといった「現在進行形」の事件を専門に扱う特殊班の別称。「シット」ではなく「エスアイティー」と呼ぶのが正しい。規模や名称は、それぞれで異なるが、各警察にも同様のチームが存在する。説得に応じない場合は強行突入するが、あくまで「人質救出と犯人の生け捕りを目指す」(警察幹部)。
一方、SATは警備部に属する部隊で、警視庁▽大阪府警▽北海道警▽千葉県警▽神奈川県警▽愛知県警▽福岡県警▽沖縄県警-の8都府県警に設けられている。設立の経緯がハイジャック事件の対処だったため大都市圏と大規模空港がある警察に置かれている。犯人の制圧、摘発を主な任務とし「説得や交渉はしない」(同)という。
中野事件では、青木政憲容疑者(31)は銃を手にするなどし約12時間にわたり立てこもった。人質の安全と説得が優先され、SATも投入されたが、SITによる説得、交渉が進められた。
なぜ、SITやSATが投入されるのか。SATは8都府県警にしかなく、未設置の府県警で銃器を使った事件やテロが起きれば8府県警の中から急行する。
SITの場合も、警察庁が全国を5つのエリアに分け、そこで銃器を用いた人質事件が発生した場合、指定している警察(北海道警▽警視庁▽大阪府警▽愛知県警▽福岡県警)から「派遣部隊」を出すシステムを取る。今回も、これにのっとった対応が取られた。
■豊富な資機材と経験
各県警にも特殊班が存在するが、こうした運用が行われている背景には、地方の人員の実情が絡む。
例えば、警視庁のSITは、計約40人もの捜査員がいる。都内の施設などで定期的な訓練が行われているほか、小型カメラやコンクリートの壁を隔てても向こう側の音声を拾える特殊マイクといった偵察資機材も備える。
警視庁のSITには全国警察から多くの特殊班刑事が派遣されている。訓練や事件の場数を経験することで地元警察の練度向上にも役立てている。
今回事件のあった長野は、捜査関係者によると、特殊班は10人にも満たないとされる。2~3人の県警もあるという。このため地方では、立てこもり事件が起きれば、機動隊から応援をもらうなどし「寄せ集め」で対応しており、地元の特殊班は指揮がメインとなり、突入部隊まで専従の捜査員をそろえられないとされる。
「同じ顔ぶれで連日訓練し、アイコンタクトで意思疎通ができるほどのSITと寄せ集めたチームでは大きな差がでる。拳銃使用など過酷な場面では練度の高いSITを派遣した方がよい」(捜査関係者)
警察幹部は「長野県警は日本一ともいえる山岳遭難救助隊を持つなど各警察で得意分野がある」と前置きし、「10年に1度あるかどうかも分からない誘拐や立てこもりに地方警察が人や予算を割くのは困難。大規模警察から応援を出すのが現実的だ」と話している。(王美慧、内田優作)
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