プーチン大統領
激怒したプリゴジン氏は「『正義の行進』を始める」と宣言して武装反乱を実行に移した。ロストフナドヌーの軍施設を掌握した後、モスクワに向かって北進する間にロシア正規軍には特に抵抗されなかったという。英国防省は報告で「ロシア正規軍のうち一部がワグネルグループを黙認し消極的な立場を維持しているとみられる」と伝えた。
【写真】ロストフナドヌーを離れるプリゴジン氏の姿を捕捉
ワグネルの部隊が終結するとロシア大統領府はすぐプリゴジン氏の逮捕を命じモスクワ・ボロネジに対テロ作戦体制を発令した。だがモスクワには当日午後になって南西部郊外に機関銃砲台を設置されるなど警戒強化はもたつく姿だった。ベラルーシのテレグラムメディア、ネクスタはワグネルグループの北進過程でロシア軍がヘリ6機と航空管制機1機など航空機7機を失ったと伝えた。プリゴジン氏はロシアの軍用ヘリを撃墜したと主張したが確認されなかった。
プーチン大統領は24日に国民向け演説を通じプリゴジン氏を猛非難した。彼は「われわれは背中に刃物が刺さる状況を目撃しており、反逆に直面した。われわれの対応は苛酷だろう」と威嚇した。また、モスクワ防衛に向け「悪魔の部隊」と呼ばれるチェチェン軍の精鋭兵力3000人を配備した。
モスクワは超緊張状態となった。赤の広場と主要博物館は閉鎖され、モスクワ南部郊外には装甲車と兵力が駐留する検問所が設置された。モスクワに向かう一部道路ではワグネルグループの進撃を防ぐためフォークレーンなど重装備が道路を掘り返して分断する姿もとらえられた。
ひとまずプリゴジン氏がモスクワを目前にして撤収を決め最悪の事態は免れたが、プーチン大統領の政治的リーダーシップはすでに相当な打撃を受けた。英BBCは「プーチンは急変する状況を統制できない指導者のように見え、ロシア人は24時間にわたる無政府状態を経験しプーチンの代案を考えることになっただろう」と伝えた。
ウクライナのゼレンスキー大統領は国民向けの演説で「プーチン大統領の統制力喪失が立証された。ロシアの都市を掌握して武器庫を奪取するのがどれだけ容易なのかを表わした」と強調した。ポーランドのドゥダ大統領もやはり「全てのものが脱ロシア化が進行していることを見せてくれる。ポーランド安保に良い兆し」と話した。
ワシントン・ポストはワグネルグループが予想を覆す速度でモスクワに進撃できた背景に対し、「プリゴジン氏がソーシャルメディアを通じて積み重ねた大衆的影響力のおかげ」と分析した。プリゴジン氏はテレグラムを通じて数カ月にわたりロシア軍指揮部の無能と腐敗、ウクライナの戦場の実状を公開してきた。また、プーチン大統領の命令で始まった「ウクライナ特別軍事作戦」がとんでもない結果を生んでいると主張し、ロシアの富裕層とエリートが自身の子どもは戦争に送り出さない二重的行動を見せているとはばかることなく批判して国民の歓心を買った。結局プリゴジン氏が軍上層部を討つという名分を掲げて武装反乱を起こし、ロシア国民と軍人の相当数が内心で彼を支持したり同調したりしたということだ。
一方、ニューヨーク・タイムズは米国政府が今回のプリゴジン氏の軍事行動を21日にすでに認知していたと報道した。米情報当局は追加情報を確認した後、22日に一部議員らとこうした状況を共有したという。ワシントン・ポストは匿名の当局者の話として「明確ではないが、プーチン大統領も少なくとも24時間前には報告を受けただろう」と伝えた。