ロシアのプーチン大統領(古厩正樹撮影)
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、民間軍事会社「ワグネル」の創設者で反乱を起こしたエフゲニー・プリゴジン氏への「報復」を宣言した。プリゴジン氏をめぐる不正調査の必要性に言及したのだ。だが、肝心のプリゴジン氏は国外への脱出に成功した。「ワグネルの乱」ではモスクワに迫られ、来年の大統領選を前にプーチン氏の求心力は低下した。この間にウクライナ軍は着実に進撃を果たし、プーチン氏への圧力は内外で強まっている。
【写真】ウクライナ軍の攻撃で破壊されたとするロシア軍陣地
「ワグネルの維持管理は国が肩代わりしていたのに、オーナーは軍への給食サービスで年800億ルーブル(約1350億円)を稼いでいた」
プーチン氏は27日、クレムリン(大統領府)で行われた軍関係者との会合で、プリゴジン氏を念頭にこう語った。
プリゴジン氏は、食品販売やレストラン経営などを手がける企業「コンコルド」を経営しており、プーチン氏は同社の資金事情について調査する必要があると述べた。
ところが、最大の「キーマン」であるプリゴジン氏が27日、ベラルーシに到着したことを、同国のアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が明らかにした。
そのプリゴジン氏は26日、通信アプリ「テレグラム」に音声メッセージを投稿。その中で「われわれは780キロ進み、モスクワまで200キロ未満まで迫った」「行進するわれわれを見た全ての軍人が支持した」などとワグネルの進撃の様子を明かしていた。
プーチン氏は同日夜のテレビ演説で「祖国の運命に対する責任が、すべての人々を団結させたのだ」などと述べ、「結束」を強調した。しかし、ロシア国内で反乱が起きたという事実は揺らがない。
ロシアの混乱中、ウクライナ軍は順調に領土奪還を果たしているようだ。
英国防省の27日の戦況分析によると、ウクライナ軍は東部ドネツク州の州都ドネツク西郊クラスノホリフカに進軍した。同省は、ウクライナ軍が2014年から親ロシア派によって実効支配された地域を奪還する初めてのケースになり得ると指摘している。
来年のロシア大統領選に向けても、ロシア国内で変化が起きているとの見方がある。
英BBCは26日、ロシア紙「ニェザヴィーシマヤ・ガゼータ」の社主兼主幹のコンスタンティン・レムチュコフ氏の話を伝えた。レムチュコフ氏は、ロシアのエリート層が大統領選に向けて「この軍事クーデターが起きるまでウラジーミル・プーチンを頼りにしてきたが、今後もそうするべきなのか、自問自答するだろう」と予測した。