ハーブ研究家のベニシア・スタンリー・スミスさん 夫の愛に支えられて旅立つ 美しい庭に四季があるように人生にも季節がめぐる

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ベニシア・スタンリー・スミスさん

先日僕は65歳の定年を迎え、<町医者卒業ライブ>を行いました。尊敬してやまない梅沢富美男さんを始め多くの人からお花を頂き幸福な気持ちに包まれました。

【写真】台所で談笑するベニシアさんと梶山正さん夫妻

植物に囲まれ暮らす日々など無縁の生活を送ってきました。しかし年をとるたび花や緑に癒されたくなる気持ちはわかるようになりました。そういえば、と思い出し、以前患者さんからプレゼントされた「京都里山暮らし」という本を本棚から探しあてた矢先、この本の著者であるイギリス出身の女性の訃報が届きました。

京都大原の築百年の古民家に住み、ハーブ研究家として活躍、その暮らしを紹介したテレビ番組『猫のしっぽ カエルの手』(NHK)も人気を博したベニシア・スタンリー・スミスさんが6月21日、京都の自宅で死去されました。享年72。死因は誤嚥性肺炎との発表です。

夫で写真家の梶山正さんのエッセーによればベニシアさんは2018年頃から「目がよく見えない」と言うようになりました。眼科で「白内障」と診断され手術を受けましたが、回復しませんでした。その後、精密検査を受けて診断された病名は後部皮質萎縮症(PCA)。これは目の病気ではありませんが、視覚機能などに影響を与える神経変性疾患です。珍しい病気のため診断基準は確立されていません。

失語や、記憶障害などの症状も出ることから、アルツハイマー型認知症と誤診されている例も多くあるようです。しかし典型的なアルツハイマーよりも発症年齢が早く、50代~60代前半で罹る人が多いという報告もあります。

また、レビー小体病やクロイツフェルト・ヤコブ病と関連しているという知見もあり、まだまだ未解明の病気です。

「目が見えなくて、悲しい」と落ち込むベニシアさんに、9歳年下の正さんは、細やかな愛情で答えていったようです。一昨年の「家庭画報」のエッセーで彼はこのように書いています。

<多くの友人や訪問介護員さんたちが助けてくれるのを見て、僕は自分のことばかりを考えて生きるのは大人げないと思うようになった(中略)。自分だけがやりたいことをやっても、それが幸せとは思えない(中略)。ベニシアが笑顔でいることが、僕の幸せと言える>

2019年にはご夫婦の共著で、『ベニシアと正、人生の秋に』(風土社)というタイトルの本を出版されています。

美しい庭に四季があるように、人生にも季節がめぐります。春や夏は一人で元気に生きられても、秋冬を迎えれば、添え木のように寄り添ってくれる誰かの手が必要になるものです。ベニシアさんは、目が見えなくなっても夫の愛に支えられて、人生の秋と冬の美しさを感じて旅立ったことでしょう。

■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。公益財団法人日本尊厳死協会副理事長としてリビング・ウイルの啓発を行う。映画『痛くない死に方』『けったいな町医者』をはじめ出版や配信などさまざまなメディアで長年の町医者経験を活かした医療情報を発信する傍ら、ときどき音楽ライブも。

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