ロシアが昨年2月にウクライナへの侵略を開始してから、9日で500日となる。ウクライナ軍は6月に始めた大規模な反転攻勢の序盤で苦戦が伝えられているものの、戦線拡大で露軍の反撃能力を低下させる手法がじわじわと効いているようだ。
【動画】30ミリ機関砲でバフムトのロシア軍陣地を撃破するウクライナ軍
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7日、ウクライナ東部バフムト近郊で砲弾を運ぶウクライナ兵=AP
英国防省は8日、ウクライナ軍の攻勢を受ける露軍が東部ドネツク州の要衝バフムトの死守に必要な追加兵力を持ち合わせていないとの分析を明らかにした。英国防省は露軍が5月下旬に「全域制圧」を宣言したバフムトに関し、「プーチン露政権にとっての数少ない戦果で、政治的に断念できない」と指摘した。
ウクライナ軍は6月4日にバフムト周辺と南部ザポリージャ州一帯の三つの戦線で大規模な反攻を開始した。反攻はロシアが2014年に一方的に併合した南部クリミアと露本土との分断が目的で、バフムト戦線での攻勢は露軍の戦力分散が狙いとみられている。
奪還を目指す南部の拠点都市までは反攻の起点からそれぞれ100キロ・メートル前後あるが、ウクライナ軍の前進は1か月余りで最大約10キロ・メートル、解放した面積は約158平方キロ・メートルにとどまる。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も苦戦を認めている。
一因は露軍が地雷原や塹壕(ざんごう)などで築いた重層的な防衛線だ。ウクライナ軍参謀本部の幹部は5日、国営通信とのインタビューで、露軍が前線から後方に向けて10~40キロ・メートルの防衛線を構築しているとの分析を明らかにした。
ただ、英BBCロシア語版は7日、最もウクライナに近い側の防衛線が突破される事態を防ぐため、露軍が後方から兵力を前線に移動させていると伝えた。露軍占領地域の後方兵力が手薄になる可能性がある。ウクライナ軍は主力部隊を温存しており、戦闘は一段と激しくなる見通しだ。
一方、ウクライナの検事総長は8日、ロシアの侵略開始から約500日でウクライナの民間人少なくとも1万500人が死亡し、11万5000の民間施設が破壊されたと発表した。露軍による戦争犯罪の捜査件数が9万4000件に上ることも明らかにした。
ゼレンスキー氏は8日、ウクライナ軍が露軍から約1年前に奪還した黒海西部のズミイヌイ(蛇)島を視察し、国民の士気を鼓舞した。