韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は15日、大統領府の会議で、日本政府による半導体材料の輸出管理強化について「韓国の経済成長を妨げたことに等しい」とし、韓国企業が日本依存の脱却を進めることで「結局、日本経済により大きな被害が及ぶことを警告する」と批判した。日本側も反論し、対立は泥沼化。両国は23、24日にジュネーブで開かれる世界貿易機関(WTO)の一般理事会で直接、主張をぶつけ合う。(ソウル 桜井紀雄、大柳聡庸)
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文氏が日本の措置について見解を表明するのは8日以降、3回目で、日本政府に「一方的な圧力をやめ、今からでも外交的な解決の場に戻ることを望む」と要求した。韓国政府は16日も日本の措置への対策を話し合う関係閣僚会議を開いたが、有効な解決策は見いだせていない。文氏は日本側の一方的な措置だと批判のトーンを強め、韓国政府の無策ぶりへの非難をかわす狙いとみられる。
文氏は、歴史問題と経済問題を結び付けた「前例のない」今回の措置は「両国関係発展の歴史に逆行する」と指摘。「相互依存と共生で半世紀にわたって積み重ねてきた韓日経済協力の枠組みを壊すものだ」と批判した。さらに、日本が今回の措置を北朝鮮に対する韓国の国連制裁違反疑惑と絡めているとの見方を示し、「制裁の枠内で南北関係の発展や朝鮮半島の平和のために総力を挙げている韓国政府への重大な挑戦だ」とも主張。疑惑解消に向けてともに国際機関の検証を受けるよう改めて日本側に求めた。
一方、世耕弘成経済産業相は16日の閣議後の記者会見で、韓国向け輸出管理強化に関して「韓国から(北朝鮮など)第三国への具体的な輸出案件を念頭に置いたものではない」とし、制裁違反疑惑とは無関係だと説明。「文大統領の発言にあるような指摘は全く当たらない」と強調し、文氏に反論した。
両国間の協議を求める文氏の発言に対しても「協議に応じるつもりはなく、協議の対象でもない」と改めて拒否した。
世耕氏はさらに、12日に行われた日韓の事務レベル会合で韓国側が措置の撤回を要請したと説明したことについて「全く事実の異なる主張だ」と反論。その上で「両国間の信頼関係が損なわれ、大変、遺憾だ。こうした状況下では政策対話も開けない」と述べ、不快感を示した。
また、文氏は15日の会議で、いわゆる徴用工訴訟で日本企業に賠償を命じた最高裁判決についても取り上げ、「韓国政府が提示した案が唯一の解決策だと主張したことはない。両国国民と被害者の共感を得られる合理的な方法を議論してみよう」との趣旨だったと説明した。韓国側は日韓の企業が自発的に資金を出し合う賠償案を提示し、日本側は拒否している。