13日、米ロサンゼルスのネットフリックス社屋前で、待遇改善や人工知能の規制を求めて行進する俳優や脚本家ら=後藤香代撮影
【ロサンゼルス=後藤香代】ハリウッドの有名俳優ら約16万人が加入する全米映画俳優組合は13日、大手製作会社に待遇改善と人工知能(AI)の規制を求め、14日からストライキを決行すると発表した。組合としては1980年以来、43年ぶりとなる。
【写真】22年5月に来日した米俳優トム・クルーズさん
全米脚本家組合(約1万1500人)は5月からストを続けており、合同実施は1960年以来63年ぶり。今後は脚本家に加え、俳優も映画やドラマの撮影、宣伝活動への参加を見送る。
組合側は「(インターネット上で動画を配信する)ストリーミングとAIの台頭で、俳優の生活は存亡の危機に直面している」として、報酬の増額や俳優業の存続の保証を求めている。多くの製作会社はストリーミングに多額の製作費を投入しながら、安価な利用料から十分な収益を得られず、俳優の報酬を圧迫している。俳優組合の首席交渉人は製作会社が俳優の演技をAIに学習させる動きについても、「俳優が1日分の給料でスキャンされ、同意も対価もなく永遠に利用できるものだ」と批判している。
ロサンゼルスの有料動画配信サービス「ネットフリックス」社屋前では13日、俳優や脚本家らが行進した。人気俳優のマット・デイモンさんはロンドンで開かれた映画の宣伝イベントで「健康保険に加入するには年収2万6000ドル(約360万円)を稼ぐ必要がある。多くの人はぎりぎりのところにいる」と述べ、無名俳優らの苦境を訴えた。
米国では脚本家のストで多くの深夜番組の製作が止まり、再放送が増えた。日本でも今後、動画配信や映画公開の延期が予想される。米CNNは年末までストが続く可能性を指摘している。
ストライキの決定に伴い、日本国内で21日に公開する人気アクション映画「ミッション:インポッシブル」シリーズ最新作の来日ツアーが急きょ中止となった。主演のトム・クルーズさんらが17、18日に東京都内でイベントを開く予定だった。