上弦の鬼は疫病がモデル?
半天狗、玉壺ら、上弦の鬼たちが描かれた『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』のキービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
『鬼滅の刃』に登場する上弦の鬼は、みなそれぞれが個性的な名前で、一部でその由来は作品の時代背景である大正時代にも流行した、人類が長年悩まされる「疫病」だという説が、読者の間で考察されています。実際に作中では、上弦の陸・堕姫(だき)の生前の名前「梅」は、彼女の母親が患っていた病気が由来であると明言されていました。かつて流行した病気と、作中で描かれた上弦の鬼の描写とは、どのように関係付けられているのでしょうか。
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※この記事では、『鬼滅の刃』でまだアニメ化されていないストーリーに関する記述を含みます。
まず、遊郭の最下層で生まれた堕姫・妓夫太郎兄妹は、過酷な人生の末に上弦の鬼・童磨(どうま)に出会い、鬼となりました。兄である妓夫太郎(ぎゅうたろう)の特徴である顔全体に拡がる痣やギザギザの歯は、堕姫の生前の名前の由来になったと考えられる「梅毒」の症状に酷似しています。このことから、ファンの間で他の上弦の鬼たちも、疫病がモチーフになっているのではないかと考察されるようになったようです。
刀鍛冶の里を発見した上弦の伍・玉壺(ぎょっこ)は、壺を用いて変幻自在に操れる水や水生生物のような化け物を生み出す血鬼術を使う鬼です。そんな玉壺のモチーフは、「アメーバ赤痢」ではないかと言われています。
発展途上国で流行することが多いと言われるアメーバ赤痢は、水の衛生環境が整っていない状況下で流行する疫病で、感染すると壺型の潰瘍ができることもあります。作中では説明はされませんでしたが、『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺対見聞録・弐』では、玉壺は生前、漁村の外れで魚の死骸を集めていたようなので、腐敗した魚やそれが浸かった水から、人間時代の彼自身が感染していてもおかしくありません。
額の大きなコブが特徴の上弦の肆・半天狗のモチーフは、別名「らい病」とも呼ばれた「ハンセン病」が有力とされています。らい菌という抗酸菌がおこす慢性の感染症であるハンセン病に感染すると、手足の末梢神経の麻痺や皮膚のさまざまな変化が症状として現れます。
場合によっては半天狗のようなコブができることもありました。また、作中で短いながらも描写があった通り、半天狗は生前、自身が盲目であると嘘をつき、盗みや強盗を働いています。彼は経歴もその時々で変え続けていた、嘘で塗り固められた人生でした。そんな嘘(英語で「lie」)まみれの半天狗の背景も、ハンセン病の別名「らい病」とかかっているのではないかと言われています。
また作中で最初に登場し、炭治郎たちに上弦の鬼の強さを印象付けた上弦の参・猗窩座のモチーフは「麻疹」と言われています。麻疹は一般的に、「はしか」とも呼ばれ、現在もワクチン接種が推奨される病気ですが、かつては全身の赤い発疹から「赤斑瘡(あかもがさ)」とも呼ばれていました。
上記のように名前の語感が似ている他、猗窩座の全身に刺青が入っていることも、かつて富山県の高岡市で、麻疹よけのおまじないとして刺青の模様としても人気な「九紋龍の模様の手形」が使われていたことと重なるとも言われています。