姉の安田祥子さん(右)と、妹の由紀さおりさん(左)(撮影:玉置順子(t-cube))
◆幼い頃から童謡歌手として活動を続けてきた安田祥子さん、由紀さおりさん姉妹。一時は別々の道を歩むも、あることをきっかけに童謡デュオとしてステージに立つようになりました。家族として仕事仲間として長い時間をともにしながら、ふたりの性格は正反対だそうで――(構成:篠藤ゆり 撮影:玉置順子(t-cube))
【写真】イヤリングとショートカットで若々しい!由紀さおりさん
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◆女としての人生も違ったけれど
安田 大学を卒業して、オペラに出演したり、大学の教壇に立ったりしていたけれど、実は私、在学中に1度お見合いをしたのよ。
由紀 えぇっ!初耳だわ。
安田 初めて言いました(笑)。ある程度の年齢になったら、結婚しなきゃいけない、という空気があったから。
由紀 私は上のふたりより先に結婚してはダメと両親から言われていたから、内心、早く結婚してほしいと思っていたのよ。
安田 あの頃、自分の妻が舞台の上で歌うことをよしとする男性はいなくて。お見合いの相手も、「家でピアノを教えるだけならいい」とおっしゃるのでお断りしました。
由紀 結婚といえば、旦那さまになった方のことだけど(笑)、傍から見るとお姉ちゃんを好きなことは一目瞭然なのに、お姉ちゃん本人だけが気づいていないなんてこともあったわね。
安田 どういうこと?
由紀 海外勤務になった時、帰国するたびに父と兄に洋酒をお土産に持ってきてくれたり、ニューヨークからお姉ちゃんに毎日のように電話してきたり。それに、住んでいる部屋の間取りについてお姉ちゃんに説明したことがあったでしょう。お姉ちゃんったら、「あら、広いのねえ」って言うだけで、なんで相手がそんな話をしているのかわかってない。隣で、母も私もヤキモキしていたんだから。
安田 まぁ!ふたりでそんな話をしていたのね。彼は一時、私の後ろで合唱していた方。私に歌い続けてほしいって言ってくれたから、結婚を決めたの。それと、当時は海外の楽譜を手に入れるのが大変で、アメリカに行けるということも理由のひとつではあったわね。(笑)
由紀 私はお姉ちゃんが結婚した少し後、「夜明けのスキャット」が大ヒット。一気に世界が変わった。
安田 「『紅白歌合戦』に出場が決まった」と国際電話をもらった時は、泣いてしまったのよ。私が日本でクラシックを歌っていた頃、あなたは下積みで勉強中。私がニューヨークで再び勉強を始めたら、あなたが歌手として活躍して。大人になるにつれて、きょうだいとはいえ、生活環境は大きく違っていったわ。
由紀 女としての人生も、まったく違ったわね(笑)。お姉ちゃんは結婚後、ひとり娘を出産した。私はデビューして19日後に、CMディレクターと結婚。若かったこともあって、結婚と仕事の両立が難しかったのね。7年で別居、その7年後に離婚してしまったから。
安田 いま考えても不思議なのだけど、あのころは結婚したあなたが住んでいたところも、別居したことも知らなかったのよ。