「こいでもこいでも岸から離れ・・・」人気のSUPで水難事故急増

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近年人気が高まっているSUPだが、漂流による事故も増加している=福岡市早良区で2023年8月1日午前11時9分、平川昌範撮影

 福岡市の美容師の30代男性は7月17日早朝、職場の同僚4人と連れ立ち、SUPを使った海釣りをしようと市内の志賀島を訪れた。SUPはサーフィンより少し大きなボードの上に乗りパドルでこいで海や川、湖などの水面を進むレジャー。男性は初めてだったが、経験者の同僚に教えてもらいながら挑戦した。「沖の方がたくさん釣れる」。釣果を求めて岸から離れた。

 天気はよく、波は穏やかだった。約2時間後、男性らは沖合約2~3キロの海上にたどり着き、釣りを始めた。ところが、間もなく風が吹き始め、男性は沖の方へ流されていくのを感じた。不安に思い、仲間より先に岸に戻ることにした。

 「早く戻れ」。同僚からも言われたが、いくらこいでも前に進まない。それどころか、さらに沖に流された。「ヤバい」。男性は約4時間にわたって必死にパドルをこぎ続けたが、岸に近づけず、同僚らともはぐれた。自力で戻るのを諦め、持っていたスマートフォンで118番した。

 海保によると、通報の発信点は志賀島の北約3・3キロの海上。すぐに巡視艇で急行し、約1時間後に救出した。海保の担当者は「今回は通信手段があったので認知することができたが、電波がつながらないなど一歩間違えば危険な状態になっていた」と強調する。

 男性は「ボードに乗っていれば海には落ちないだろう」とライフジャケットすら未着用だった。「とにかく無理をせず、戻れる範囲内で楽しめばよかった」と反省する。

 SUPはボード上でヨガや釣り、波に乗ってサーフィンができるなど楽しみ方は多彩で、競技大会も開かれる。日本スタンドアップパドルボード協会(横浜市)によると、コロナ下のアウトドア志向の広がりで愛好者は増え、国内で推定50万人以上ともいわれる。

 ただ、事故は近年急増し、海上保安庁によると、2022年にレジャー目的のSUP中の遭難や溺れる事故は全国で70人に上り、16年(14人)の5倍に達した。死者は22年だけで4人となり、事故者数とともに過去最多となった。

 海保が18~22年の5年間の事故(265人)を分析したところ、発生時期は7~10月が多く帰還不能が9割を占めた。事故に遭った8割がSUP経験が3年未満の経験が浅い人だった。

 事故に遭う理由として、ボードが平らで水中で抵抗になる部分がほとんどなく、風の影響を受けやすい特徴がある。事故の8割は風速5メートル以上、7割が波高0・5メートル以上で起きていた。波風で操縦が困難になり流されるケースが多いとみられ、海保担当者は「一日の中でも気象は絶えず変わる。海面に白波が出ていれば、風速5メートル以上の目安になる」と注意を呼びかける。

 船舶のような免許が不要のため手軽に始めやすく、気象についての知識がなく、技能も不足したまま乗る人が多いことも背景にあるとみられ、この担当者はSUPをする際の4点セットとして、救命胴衣▽パドル▽ボードと足をつなぐリーシュコード▽緊急連絡のための防水ケースに入れた携帯電話――が必需品だと強調。「始める前にインストラクターによるスクールを受講したり、適切な装備を着用したりするなど安全面に気をつけてほしい」と求める。【長岡健太郎、栗栖由喜】

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