中国の習近平国家主席(古厩正樹撮影)
中国の信託大手、中融国際信託で、期限を迎えた信託商品の支払いが滞っていることが明らかになった。香港メディアや米ブルームバーグが報じ、15日の産経新聞も報じた。同信託の主要株主である中国最大級の投資ファンド、中植企業集団の流動性危機が関連しているとの情報もある。習近平政権は問題の封じ込めに必死だが、不動産バブルが崩壊すれば「中国版リーマン・ショック」のような巨大金融危機に発展しかねない事態だ。この問題をウオッチしてきた産経新聞の田村秀男特別記者に聞いた。
【グラフでみる】中国の住宅着工、不動産投資とノンバンク融資の前年比増減率
■田村秀男氏が分析
香港紙、明報(電子版)によると、上海証券取引所に上場する少なくとも3社が、投資していた中融国際信託の信託商品が期日までに返済されなかったと開示した。このうち湖南金博碳素については、中融の信託商品に投資した6000万元(約12億円)に関連するものだという。湖南金博碳素は開示文書で「財務状況は健全であり、正常な企業運営や日常的な資金需要には影響しない」と説明した。
中融の主要株主である中植企業集団の流動性危機が支払い遅延と関連しているという憶測が広がっている。中植が管理する資産規模は約1兆元(約20兆円)だという。
田村氏によると、中国の6月末の総融資残高は銀行系が230兆元(約4600兆円)、中植のようなノンバンク系が134兆元(2680兆円)で、ノンバンク系の比重が4割近くと先進国に比べて圧倒的に高い。ノンバンクの問題は中国経済の危機に直結しかねない。
田村氏は、中植の問題について7月中旬から取材してきた。「中国国内のメディアはどこも報じず、投資家たちはSNS『微信(ウィーチャット)』を通じて各地に抗議グループを結成した。今月16日には北京の中植本社に押しかける予定だったが、参加者の自宅を警察署の担当官が訪れ、『北京には行かないほうがよい』と勧告してきたという」と経緯を説明する。中融に投資する上場企業3社の情報開示を受けた習政権は隠しようがなくなったという。
SNSでは、約15万人の投資家に利払いが滞り、その元本総額は約2300億元(約4兆6000億円)に達しているという驚くべき情報もある。
■米国株暴落に発展も
田村氏はこんな見通しを示す。
「SNSでは債務危機は『爆雷』と呼ばれている。習政権は金融崩壊を防ぐため、信託側に元本の支払いを約束させるなどの措置を取るだろうが、投資家の資金引き揚げが止まらない可能性もある。『中国版リーマン・ショック』に発展すれば米国株も暴落する恐れがあるため、ジョー・バイデン米政権も警戒しているのではないか」