米軍は既存技術を活用し、中国軍に対して優位性を確保できる

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既存技術でもISRによる戦場認識力の拡張を高め、敵の認識力を阻害し、堅牢な通信環境を構築することできる

ランド研究所によると、中国軍に対抗するためには、新しいアプローチや新しい調達に資金を投じるのではなく、既存の技術による改善策を活用する必要があると発表しました。台湾有事を想定したウォーゲームにおいて、既存の技術による改善策が効果を示し、第5世代戦闘機の損失を50%減少させることに成功しました。

ランド研究所によれば、米諜報機関や米軍の上層部は、習近平主席が2027年までに台湾統一の準備を整えるよう指示したと公に警告しています。しかし、これは習主席が台湾侵攻を決断したという意味ではなく、2027年までに武力統一という選択肢を手に入れたいと考えているようです。一方、国防総省は2027年もしくは2027年以降に中国の軍事的アプローチを確実に否定できるとの証拠を示しておらず、2027年までに新しいアプローチや新しい調達に資金を投じるには限られた時間しかありません。

特 Competitive Studies Projectと共同で行ったウォーゲームでは、台湾海峡を舞台にし、米軍の勝利が困難であるか、もしくは勝利のコストが高すぎることが示されました。それに対しランド研究所は、数年以内に問題を改善するためのアプローチを模索し、その改善策がウォーゲームでどの程度有効だったかを発表しました。

このウォーゲームでは、シリコンバレーの経営者や技術者が多数参加し、従来の戦略家や専門家とは異なる視点とアプローチで問題に取り組みました。初回のウォーゲームでは解決困難な作戦上の問題を特定し、2回目のウォーゲームではブレーンストーミングを行い、82の改善策を生み出しました。実現の可能性や有効性を考慮して、改善策を17に絞り込みました。そして3回目のウォーゲームでは、改善策がどの程度の効果をもたらすかを評価しました。その結果、改善策は有望なものであることが判明しました。

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シリコンバレーの経営者や技術者が提示した改善策は、すべて既存の技術で構成されており、人民解放軍のキル・チェーンを阻害し、米軍(台湾軍)の生存率を向上させることに関連しています。また、戦場で静止するあらゆる資産の寿命は極めて短いため、戦場の兵士や指揮官は敵に発見され破壊されるリスクを減らすために機動性を高める必要があります。この機動性は前線部隊やロジスティクスだけでなく、後方の司令部にも必要です。

具体的には、ドローンを活用して人民解放軍の認識力を阻害し、人民解放軍の監視下に入る味方部隊に警告を与えるアプリケーションを開発し、物理的、電子的、サイバー的な偽装を行うタイミングを指示します。さらに、安全性の高い通信環境で情報を共有し、分散しながら移動する部隊を統合指揮する能力が反撃の鍵となります。

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2022年に実装が始まったIntegrated Warfighting Network(IWN)は、従来の通信よりも堅牢で妨害に対する耐性も高く、影響を受けても回復力が早いという特徴を持っています。ランド研究所によれば、中国は米軍と台湾軍の共同作戦能力を必ず妨害してくるため、IWNの利用が重要だと指摘しています。この能力はすでに実用化されており、技術の成熟を待つ必要はありません。

また、スマート機雷の活用やリアルタイム翻訳も効果が高いです。ただし、米軍と台湾軍の共同作戦能力は対話ができることを前提として計画されていますが、実際には台湾人の1/3以下しか英語を話せず、米国人の1.1%しか北京語や広東語を話せないため、瞬時の意思疎通には課題が残されています。ランド研究所は、軍事用語を正確に翻訳できるソフトウェアが米軍と台湾軍の共同作戦能力の向上に役立つと評価しています。

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ウォーゲームでの評価では、17の改善策を取り入れない場合、人民解放軍のミサイル攻撃により100機以上の第5世代戦闘機が失われました。しかし、改善策を取り入れると第5世代戦闘機の損失は50%減少し、人民解放軍が失う戦闘機の数は70%増加し、水陸両用部隊の損失も50%から66%に増加しました。これにより、ランド研究所は既存技術による改善策に大きな可能性があると指摘しています。ただし、これらの技術は市場に出回っているため、人民解放軍も同様に利用する可能性があります。ランド研究所は、米軍が取り組みを怠れば致命的なギャップが生まれる可能性があると警告しています。

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戦争のスピードが加速する現代戦においては、装備に加えて戦場認識力の拡張や敵の認識力の阻害が重要です。どれだけ派手な装備を揃えても、ハイテンポで進む戦いに対応する能力がなければ、敵に標的を提供するだけです。

台湾の防衛においては、伝統的な対称戦にこだわることが問題とされています。戦略国際問題研究所のレポートによれば、中国軍から台湾を守るためには、日本の協力が必要です。また、米日が台湾侵攻を阻止できる可能性がありますが、その場合に失う戦力は膨大であり、在日米軍基地も攻撃の標的になることが懸念されています。台湾の防衛は困難であるとの指摘もされていますが、米シンクタンクは台湾有事で敗北するのは中国ではなく米国だとしています。さらに、台湾軍の問題点は、伝統的な概念に固執し、大戦略に取り組んでいないことです。

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Andrew Lee

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