日本政府が中国による日本産水産物の輸入停止を受けて、世界貿易機関(WTO)に反論書類を提出したことが明らかになった。この対応は、中国が輸入停止を通知したことに対して、国際機関を通じて日本が本格的な反撃に入ったことを意味する。また、自国の漁業関係者に打撃を与える水産物輸出減少に対応するため、日本政府は計1007億円の予算を投じて支援することにした。
反論書類提出の経緯
日本政府は5日、WTOに対して中国の日本産水産物禁輸措置を「遺憾」として反論書類を送った。先月31日、中国政府はWTOの衛生植物検疫措置の適用に基づき、日本産水産物に対して全面輸入停止措置を取ると通知した。SPS協定によれば、「科学的証拠が十分でない場合には暫定的措置を取ることができる」とされている。しかし、日本政府は中国が禁輸措置を取ったことについて、「全く受け入れられるものではない」とし、「即時撤廃を求める」と明確に主張している。
日本政府の主張
日本政府は提出した反論書類で、これまで汚染水海洋放出の安全性について説明してきたにもかかわらず、中国が禁輸措置を取ったことに強く反発している。また、「海洋放出後のモニタリングの結果、海域の複数のモニタリングポイントでトリチウム濃度水準が放出基準値より大幅に低く表れている」とし、「福島第1原発が年間に放出するトリチウムの量は中国の秦山原発から放出されるトリチウムの量の約10分の1」と主張している。
日本政府はさらに、地域的な包括的経済連携(RCEP)の規定に基づき、中国側に「討議要請」を行ったことも明らかにした。RCEPでは、禁輸措置を取った国に対して関係国が撤廃を要求する場合、事前に討議を要請できるようになっている。ただし、中国が討議に応じるかは不透明な状況と伝えられている。
水産業への追加支援
日本政府は中国による禁輸措置によって打撃を受けている国内水産業者を支援するため、207億円の予算を追加で投入することを明らかにした。これにより、すでに決定していた予算800億円と合わせて、水産業への支援総額は1007億円に増えることとなる。
追加される支援金は、中国に大量輸出するホタテなどの新たな販路開拓や加工設備の国内導入を支援するために利用される予定だ。岸田文雄首相は「水産業を守り抜くということで、政府、東電がしっかりとそれぞれの責任を果たしていきたい」と述べている。
まとめ
日本政府は中国による日本産水産物の輸入停止に対して、WTOに反論書類を提出し、中国の禁輸措置の即時撤廃を求めている。また、水産物輸出減少によって打撃を受ける国内漁業関係者を支援するために、1007億円の予算を追加で投入することを決定した。日本政府は水産業を守り抜くため、積極的な対応を取っていくことを表明している。