日本を取り巻く安全保障環境が悪化するなか、防衛省は2024年度一般会計予算の概算要求で、過去最大7兆7050億円を求めました。長らく続いた防衛費抑制のため、自衛隊は装備・弾薬の不足や施設・官舎の老朽化などの問題が深刻化していました。しかし、国民の生命と安全を守るためには、防衛力の強化や防衛費の増額、自衛隊員の待遇向上が不可欠なのです。国防ジャーナリストの小笠原理恵氏が、懸案だった「高速道路代問題」の進展について報告しています。
高速道路代の問題に光明が
米軍や警察の公用車は無料で高速道路を利用できますが、自衛隊は高速道路代が足りず、隊員たちは自腹で高速代を払っているのです。この問題について私はニュースサイト「日刊SPA!」で18年に問題提起しました。
しかし、ついにこの高速道路代の問題に解決の兆しが見えてきました。24年度の防衛省概算要求には、「必要な運搬費(有料道路使用料を含む)を計上し、隊員の移動にかかる負担を軽減し、勤務環境の改善を推進」と明記されました。
高速道路代は、災害派遣時(自治体負担)以外では米軍や警察の公用車は無料ですが、自衛隊は有料です。遠方への演習や訓練に使用するため、高速道路を使うための「運搬費」が不足しており、上限を超えると自衛隊車両は目的地の手前から下道を走らなければなりません。
自衛隊員の移動は、トラックの荷台がよく使われます。道路交通法では、トラックの荷台への人の乗車は禁止されていますが、自衛隊や警察は除外されています。ただし、機動隊は以前は荷台に乗っていましたが、現在はバスに改善されています。
荷台にクッションのないベンチに座って長距離を移動するのはつらいです。振動も激しく、座骨神経痛や痔の問題を抱える自衛隊員も多いです。また、エアコンのない荷台は熱中症のリスクが高く、重度の熱中症は臓器に深刻なダメージをもたらすこともあります。
以前は仲間内でカンパして高速道路に乗っていましたが、規則で禁止されました。そのため、つらい下道での長時間移動に耐えるしかありませんでした。
先進国では、戦車や装甲車には冷暖房や乗用車用シートが完備されています。これにより、熱中症を予防し、兵士の消耗を防ぐことができます。自衛隊にも数台の空調付き防護機動車はありますが、数に限りがあります。
浜田靖一前防衛相は23年版防衛白書の刊行に際して、「どれだけ高度な装備品を揃えたところで、それを扱う『人』がいなければ防衛力は発揮できません」と述べていました。
昨年の自衛官候補生の採用は4割近くまで減少しました。自衛隊に人材を集めるためには、魅力的な待遇や生活環境が必要です。
米俳優、シルベスター・スタローンがベトナム帰還兵を演じた映画「ランボー」の最後のセリフ、「俺たちが国を愛したように、国も俺たちを愛してほしい」という言葉を、新任の木原稔防衛相に考えてほしいと願います。
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