ワクチン接種後死亡の女性、調査委「アナフィラキシーの可能性高い」

ワクチン接種後死亡の女性、調査委「アナフィラキシーの可能性高い」

新型コロナウイルスワクチン接種後に死亡した女性の調査結果を報告する愛西市医療事故調査委員会の長尾能雅委員長(左)

新型コロナウイルスワクチン接種直後に死亡した女性(当時42)について、愛知県愛西市が設置した医療事故調査委員会は26日、強いアレルギー反応のアナフィラキシーを発症した可能性が高いとする最終報告書をまとめました。現場では当時、アナフィラキシーの対応がされておらず、「救命できた可能性を否定できない」などと結論づけました。

アドレナリン使用なら「救命できた可能性」 涙を浮かべ、遺族が悔しさ訴え

調査委員長の長尾能雅・名古屋大医学部付属病院副院長らが記者会見で調査結果を報告しました。

同市在住の飯岡綾乃さんは昨年11月5日、市の集団接種会場でワクチン接種直後に容体が急変し、亡くなりました。基礎疾患があったという報告もあります。

調査委は死因について、肺水腫による急性呼吸不全、急性循環不全を指摘しました。接種数分後にせきや呼吸苦を訴えた経過から、「接種によってアナフィラキシーを起こし、肺水腫を併発した可能性が高い」と結論づけました。

市の集団接種会場では、アドレナリンの筋肉注射などアナフィラキシーの対応はされていなかったと報告されています。現場の医師は、接種前から飯岡さんが体調不良があったようだと報告を受け、典型的な症状もなかったことからアナフィラキシーの可能性は低いと判断したとのことです。

調査委はこれらの対応について「標準的ではない」と指摘しました。患者が呼吸苦の場合、アナフィラキシーを想定して筋肉注射を打つよう提言しました。「早期にアドレナリンが投与されていれば救命できた可能性を否定できない」と結論づけました。

現場では、医師と看護師との事前の打ち合わせや、アナフィラキシーが起きた場合を想定した訓練などがされていなかったとのことです。こうした医療体制についても「改良の余地がある」と指摘されました。

調査委は再発防止に向け、全国の自治体や医療従事者らに対し、アナフィラキシーへの認識を新たにし、対応訓練をするよう注意喚起しています。

厚生労働省の専門家部会は今年3月、飯岡さんの死亡とワクチン接種との因果関係は「否定できない」と評価しています。

夫の英治さん(45)も「安全にできる環境を整備してほしい。調査委の提言を有効に役立てて同じような目にあう人を増やさないでほしい」と話しています。

飯岡綾乃さんが亡くなった経緯とその後の対応

2022年11月5日、飯岡さんが愛西市内の集団接種会場でワクチンを接種し、6分後にせき込むなどの症状が現れました。救護室へ移動したが、泡状の赤やピンク色の分泌物を大量に吐いた後に心停止しました。約1時間半後に病院で死亡が確認されました。

11月中旬、愛知県医師会が医療安全対策委員会を開き、その場でアドレナリンの筋肉注射をすべきであったとの検証結果を公表しました。

11月下旬、日永貴章市長は定例会見で「現場での対応は適切だった」と述べました。

12月29日、外部有識者による市の医療事故調査委員会が初めて開催されました。

23年3月10日、厚生労働省の専門家部会は、ワクチン接種と死亡との因果関係を「否定できない」と評価しました。

情報源: 朝日新聞社