国防総省、ウクライナ支援資金が残りわずかと民主党に警告

国防総省からの警告書簡によると、「ウクライナ支援資金はわずかに16億ドルしか残っていないため、追加の資金供給がなければ防空システム向けの弾薬や砲弾の供給が遅れるか削減される可能性がある」とのことです。つまり、ウクライナへの支援が途切れてしまう可能性があるのです。

16億ドルを使い尽くす前に資金補充が必要

バイデン政権はこれまで、下院の承認を受けながらウクライナ支援を実行してきましたが、そのためには「下院が承認した1,130億ドルの資金」が必要でした。ただし、共和党はこの「何に使用するのか分からない資金=白紙の小切手」として不満を抱いていました。しかし、選挙により力関係が逆転し、共和党が過半数を占める下院では資金補充が一度も認められていません。

![The White House](https://jp24h.com/wp-content/uploads/2022/11/fcekjhf325.jpg)
出典:The White House

当初、バイデン政権は追加資金をつなぎ予算に含める予定でしたが、民主党が過半数を占める上院でも支持を得られず、60億ドルに減額されました。過半数を占める共和党の下院では、ウクライナ支援資金をつなぎ予算に含めること自体が困難となりました。結果として、ウクライナ支援資金は除外される形で予算が可決されてしまいました。

バイデン政権は次のつなぎ予算に向けて動いていますが、支援資金の補充ができないとウクライナが示唆している冬季攻勢を支えることも、ロシア軍が冬場に実行するであろうインフラ攻撃を阻止することもできなくなります。

![Democrats Appropriations Committee](https://jp24h.com/wp-content/uploads/2023/10/US_2023_1002_01.png)
出典:Democrats Appropriations Committee

ウクライナ支援が途切れる前の資金補充が急務

国防総省のマイケル・マッコード会計監査官は、民主党のトップに宛てた書簡の中で、「ウクライナ支援資金をほぼ使い尽くしており、ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)に割り当てられた資金は枯渇した。大統領権限(PDA)に割り当てられた資金も16億ドルしか残っておらず、追加の資金供給がなければ防空システム向けの弾薬や砲弾の供給を遅らせるか削減しなければならくなる。さらにウクライナ軍に不可欠な155mm砲弾の調達契約にも影響を及ぼす恐れがある」と訴えています。

![PRESIDENT OF UKRAINE](https://jp24h.com/wp-content/uploads/2023/10/US_2023_1001_01.jpg)
出典:PRESIDENT OF UKRAINE

USAIの資金が尽きてしまったということは、ウクライナ軍が必要とする装備、弾薬、サービスを産業界から調達する資金がないことを意味しています。さらに、PDAの資金も16億ドルしか残っていないため、1度も使用されなかったウクライナ・レンドリース法は期限切れとなっています。したがって、16億ドルを使い尽くす前に資金補充が急務となります。

![Рустем Умєров](https://jp24h.com/wp-content/uploads/2023/10/US_2023_1002_03.jpg)
出典:Рустем Умєров

資金補充がなければ支援が途切れるリスク

ウクライナの国防相であるウメロフ氏は、「オースティン国防長官が米国のウクライナ支援は今後も継続されると保証してくれた」と述べています。しかし、議会が資金補充に同意しない限り、支援継続は見通せないのが現状です。

米下院がつなぎ予算を可決し、共和党に譲歩してもウクライナ支援資金は除外されてしまいました。バイデン政権は議会に計400億ドルの追加資金を要求しています。また、ウクライナ側は1度も使用されなかったウクライナ・レンドリース法の延長も求めています。

以上が、現在のウクライナ支援資金の状況です。バイデン政権にとっては、16億ドルを使い尽くす前に資金補充が実現し、支援が途切れないようにすることが非常に重要です。

※アイキャッチ画像の出典:[U.S. Army photo by Spc. Christian Carrillo](https://grandfleet.info/us-related/pentagon-warns-democrats-that-ukraine-aid-funds-are-nearly-exhausted/)