遺族「解決はまだ。説明して」 千葉ひき逃げ死、時効目前で逮捕

亡くなった敬子さんの遺影を見つめる明彦さん=千葉市花見川区で2023年10月2日、林帆南撮影

千葉市花見川区にて発生した死亡ひき逃げ事件。公訴時効まであと1カ月と迫った9月28日、容疑者が自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで逮捕されました。しかし、被害者の遺族の悲しみは癒えません。両親が10年前の出来事を振り返り、胸の内を語りました。

事件の概要と家族の苦境

2013年11月5日の朝、舘下敬子さん(当時47歳)はいつもと違っていました。敬子さんは出勤前にいつものように自宅2階のベランダで洗濯物を干している母政子さん(84歳)に声をかけ、玄関を出て行きました。父明彦さん(88歳)も言葉を交わしませんでした。

その後、敬子さんはいつもの帰宅時刻に戻らず、連絡もありませんでした。心配になった明彦さんは午後8時半過ぎに携帯電話を鳴らしましたが繋がりませんでした。その時点で何かが起こっていることを察知し、明彦さんは不安でいっぱいになりました。

その日の深夜になって、病院から電話がかかってきました。明彦さんは慌てて病院へ向かいましたが、敬子さんは顔を包帯で覆われ、酸素マスクを着けた状態で横たわっていました。明彦さんは必死に声をかけましたが、敬子さんは応答しませんでした。そのまま敬子さんは亡くなってしまったのです。

政子さんは声を震わせながら、「最後に何も話せなかったことが悔しくて、今でもさみしくて悲しくて仕方ありません」と話しました。敬子さんは家族にとって宝物であり、いつも一緒に出かける娘でした。

捜査の苦闘と逮捕の報せ

事件直後、警察官は頻繁に家を訪れ、捜査の状況を伝えてくれました。最初は犯人がすぐに捕まると思っていた家族でしたが、手がかりが少なく捜査は難航しました。しかし、警察官たちは必ず犯人を捕まえると励ましてくれました。

明彦さんは当時新聞配達員をしており、しばらくの間現場を通ることができませんでした。しかし、敬子さんの命日の夜には夫婦で事故現場に行き、線香を手向けながら見守りました。

そして、事件からまもなく10年が経ち、捜査に進展がありました。容疑者が逮捕されたと警察から報告を受けた瞬間、明彦さんは言葉を失いました。

逮捕されたのは印西市の自称無職、戸田昌宏容疑者(37歳)です。戸田容疑者は容疑を否認しています。千葉北署は事件発生後の14年にも戸田容疑者に事情を聞きましたが、容疑を否認されていました。しかし、今回容疑者の関係者からの情報提供によって、容疑を裏付ける証拠が見つかったのです。

まだ解決とは言えない

夫婦は捜査の行方を見守りながら、「まだ解決したわけではありませんから。本人の言葉で、ちゃんと説明してもらえたら」と話しました。被害者遺族にとって、この事件の真相を知ることは一つの救いであり、心の傷を癒すことにも繋がるでしょう。

この事件が早く解決し、敬子さんのご冥福を心からお祈りします。

この記事は日本ニュース24時間から提供されました。