千葉県で「キョン」が大量繁殖も捕獲進まず…「駆除するときに泣き叫ぶ。心がやられる」猟師が吐露する駆除の実情

千葉県で「キョン」と呼ばれる野生動物が大量繁殖していることが問題となっています。この状況により農作物への被害が増え、市民の間で困惑の声が上がっています。

キョンとは特定外来生物に指定されているシカの一種

「キョン」とは、中国や台湾を原産とする、特定外来生物に指定されているシカの一種です。勝浦市では、収穫間近だったミニトマトが、実だけでなく葉っぱまで、きれいに食べられてしまう被害が起きました。市民は「庭にある花とか食べられちゃう」「サラダバーみたい…」と語っています。御宿町でも、ネットを張って侵入対策されていた畑に、キョンの足跡が残されていました。

その被害は隣の南房総市まで広がっており、南房総市議会議員の林克治氏は、「キョンが道路に出て、フロントガラスに突っ込んできて、車でひいてしまい廃車になった」という知人のエピソードを紹介しつつ、「駆除ももちろん南房総市でも予算を使ってやっているが、全然追いついてない状況」だと語りました。

爆発的な繁殖の背景と駆除の困難さ

キョンの爆発的な繁殖は、勝浦市のレジャー施設から脱走し、野生化したことがきっかけとされています。千葉県によると、2022年の推定生息数は7万1500頭で、2012年の2万7900頭の3倍となりました。昨年度の農業被害は421万円に上ります。キョンは雑食性で、花や野菜を見境なく食べてしまいます。

被害が広がっているいすみ市では、夜行性のキョンが姿を現すという報告があります。あるキャンピング場では以前、100頭ほどのキョンが出没していましたが、キャンピング場になったことで分散したそうです。しかし、いまなおキャンピング場の担当者は、「たくさんいる。数え切れないくらい」と話しています。

地元では、許可を得た猟師がキョン駆除に取り組んでいますが、かなり難しいとのことです。「キョンはすごくすばしっこくて軽い。ワナが反応する前に逃げちゃう。腕自慢のハンターが外部から来たところで、すぐ捕れるか?そういう感じじゃない。キョンは他の動物と違って、捕獲して駆除するときに泣き叫ぶ。どれだけ生きることが大変で命が重いかこちらに伝えてくる。心をグサグサやられる。泣き叫ぶのを嫌って、捕りたくない猟師はけっこう居る。そうしたことも捕獲が進まない大きな要因としてあるのは確か」と、Hunt+石川雄揮代表は語りました。

千葉県出身の脚本家・演出家のマンボウやしろ氏も、「千葉だけで済む話じゃない気もする」と指摘しています。「10年、20年たった時に『2020年代の前半しか、打つ手なかったんじゃないか』みたいな話になってもおかしくない。わかっているのだけで7万何頭ということは、相当もっといると思う」と述べています。

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