学童保育の人材不足、給与低く人材流出…待機児童解消の課題

学童で子どもたちに指導する女性
(写真:読売新聞)

共働き家庭などの小学生を預かる「放課後児童クラブ」(学童保育)が、人手不足に悩んでいます。給与の低さや待遇面の不満から人材の流出が後を絶たず、この問題が待機児童の解消に向けた課題となっています。この様相について、専門家からは国や自治体に対策を求める声が上がっています。

非常勤の学童職員の質の確保課題

学童保育では、共働き家庭の子どもたちを受け入れ、児童の監督や食事の指導などを行っています。しかし、学童保育の職員は非常勤で雇用されることが多く、そのため質の確保に課題があります。

特に給与の低さが深刻な問題として浮き彫りになっています。例えば、ある自治体の学童保育の職員は約100人で、給与の低さから「暮らしていけない」と感じる人々が続出しています。そのため、年間に十数人が退職し、新たな職員の募集にも応募者が少ない状況となっています。このままでは学童保育の充実が難しいとの声もあります。

新たに1万人の学童職員が必要

全国的に見ても、学童保育の人手不足は深刻な問題です。今年5月時点で、待機児童は1万6825人に上ります。しかし、学童保育の定員は152万人を目指しているものの、実際には144万人にとどまっています。

この目標を達成するためには、新たに約1万人の学童職員が必要になります。しかし、現状では既存の職員の確保すら難しい状況です。学童保育の整備を支援するこども家庭庁に対して、自治体からは「新たな学童保育の整備は難しい」との苦情が相次いで寄せられています。

この人手不足の要因の一つとして、給与の低さが挙げられます。2021年度の調査によると、学童保育の常勤職員の平均給与は285万円、非常勤職員は146万円となっており、保育士の平均給与(370万円)や全産業の平均給与(426万円)に比べて大幅に低いことが問題視されています。

また、学童保育の中でも民間との待遇差が大きいことも分かっています。ある東急グループの学童保育施設では、正社員として働く女性は、以前は非常勤職員として他の学童保育施設に勤務していました。このような待遇差も、人材不足を助長している要因と言えるでしょう。

まとめ

学童保育の人材不足が深刻化しており、給与の低さや待遇面の不満から職員の流出が続いています。その結果、待機児童の問題が解消されないまま、学童保育の整備が遅れています。

この課題を解決するためには、国や自治体が給与水準の改善などの具体的な対策を講じる必要があります。学童保育の充実は、子どもたちや保護者にとっても大切な社会課題です。

【原文】
学童職員足りない、給与低く人材流出「暮らしていけない」…待機児童解消の壁に