資格を取ったのに収入減――「リカレント教育」の悲喜こもごも #人生100年 #令和のカネ

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昨今、注目を集めている「リカレント教育」をご存じだろうか。わかりやすく言えば、「社会人の学び」である。文部科学省は来年度の概算要求にリカレント教育の推進費用として104億円(前年度91億円)を盛り込み、予算編成の折衝真っただ中だ。アップデート、自分磨き、生涯学習……。言い方は様々だが、今のスキルや地位にあぐらをかかず、日々研鑽を積み、激変する社会から取り残されないようにしなければならない。ではいったい何をすればいいのか。「手っ取り早く資格?」。そう思ったあなた、ことはそう簡単ではないようだ。(日本ニュース24時間)

難関資格、社労士を取ったが…

「一旗揚げよう。そんな気持ちで資格の勉強を始めたんです」

そう語るのは二渡清美さん(55歳)だ。二渡さんは、子育てが一段落したタイミングの50歳を目前に一念発起し、会社員をしながら資格予備校に通い、社労士(社会保険労務士)資格の勉強を開始。5年の勉強のすえ2年前に合格、半年前に開業したばかりの“新米社労士”だ。

社労士といえば合格率6.4%(2023年度)の難関資格。だが、合格後の道のりは厳しかった。今まで社労士として依頼を受けた案件は2、3件だ。もともと勤めていた不動産会社に掛け合い、時短勤務として働き続けながら、現在は金~日曜日に社労士として働く二足のわらじで生計を立てている。だが、不動産会社専業のときの収入には及ばない。

「もともとは年金問題に興味を持ったのが発端だったんです。どうやら年金は相当厳しいって聞いて、老後のお金は稼がないといけないって思って勉強を始めたんです」

まさに生涯学習を志すお手本のようなきっかけだった。

だが、なかなか思うようには稼げない。合格して、ようやくこれからというタイミングでの「つまずき」もあった。

「資格予備校の合格者たちの同期会みたいなのに顔を出して、劣等感を抱いてしまったんですよね」

“もう俺には顧客がついているから安心”“資格取得前から営業していたから最高のスタートが切れた”。同期から聞かされるのはバラ色の未来ばかり。

「資格を取ることがゴールになっていたのかもしれません。“資格を取れば何者かになれる”って思っていたところもありました」

二渡さんの劣等感を慰めるかのように資格予備校は合格後も「実務家養成講座」や「即独立講座」など、合格後も新たな講座を売り込んでくる。さらには「複数の資格を持っていたほうがいい」という噂も耳にするようになった。二渡さんに限らず、そう聞いて「資格沼」に落ちていく人は少なくない。

「せっかく苦労して取った資格なんだから役立てないと…」。一時は自縄自縛の状態にも陥った。社労士を止めてしまおうとも考えたが、現役の社労士に話を聞くうちに考え方が変わってきた。

「労働者の味方になるのであれば、自分の過去の社会人経験や母として子育てをした経験も生きるかもしれないってアドバイスを受けたんです。資格はあくまでただの資格。資格で稼ぐんじゃなくて、稼ぐのは私自身なんだなって気づかされて。毎月お給料をもらう会社員生活が長いとこんな当たり前のことにも気づかないんですよね」

今の二渡さんは以前のような劣等感にさいなまれることもなくなりつつある。「労働者の視点も併せ持つ、そんな社労士になるために一歩ずつ頑張るしかないと思うんです。資格に限らず、何かを始めるのに年齢は関係ないって思っています」

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