穏健な保守層が怒っている理由 ― トランプ氏再登場の可能性と岸田政権の行政不作為に対する有権者の「ノー」

最近、米国政治に詳しい人々から驚きの話を聞いたことがあります。「来年の大統領選挙で、ドナルド・トランプ前大統領が再び勝利するかもしれない」というのです。私はまさかと思いましたが、「トランプ氏とジョー・バイデン氏、どちらが優れた大統領だと言えるのか」と問われると、実はどちらもどちらとも言えないのです。つまり、トランプ氏の再登場は十分にあり得るということなのです。

ちなみに、トランプ氏が2016年に勝利した際、当時の安倍晋三首相がニューヨークのトランプタワーを訪れ、二人の間には緊密な関係が築かれました。そして、その後、世界のトランプ外交の主導権を握ることとなったのですが、岸田文雄首相が同じようなリーダーシップを発揮できるのか、私は少し心配です。

選挙の話に戻りましょう。昨年、極右政党がイタリアの第一党となり、ジョルジャ・メローニ党首が首相に就任しました。また、今年11月に行われたオランダの下院選挙では、ヘルト・ウィルダース氏率いる極右政党が「オランダのトランプ」と呼ばれ、連立政権を目指して第一党となりました。さらに、10月にはドイツの地方選挙でも極右政党が勢力を伸ばしました。

欧米では、左派政権が推進する過激なLGBT、移民、環境政策に対する保守派の不満が、極右政党や政治家の支持につながっていると指摘されています。選ばれる政治家が危険な人物であることも少なくありませんが、一方で選挙を行う有権者の大半は穏健な保守層であるという点が重要です。

以前、ベストセラー作家の百田尚樹氏が主導した日本保守党が大阪で街宣を行った際、想定以上の人々が集まり、警察から中止を勧告される事態が起きました。その際、集まった人々は大声で騒ぐことなく、静かに演説を待つ姿勢を示しました。この静寂こそが、現在の政治に不満を抱き、変化を求める強いエネルギーを感じさせるものでした。

日本保守党の結党宣言では、政府に対して「無節操な移民政策やLGBT理解増進法など、祖国への無理解な政策」を批判しています。

埼玉県川口市でクルド人と地域住民の間でトラブルが続いていることや、LGBT法成立後に「心は女性だが体は男性」という人物が女性用の入浴施設に入ったことが逮捕されたことなど、保守派やリベラル派に関わらず、多くの人々が深刻な危機感を抱いています。改革は必要ですが、行き過ぎた政策は避けるべきなのです。

美しい山々に醜いソーラーパネルが設置されるようなことも同様です。これらは「行政の不作為」の一例と言えます。欧米では、社会がより激しい浸食や破壊に見舞われており、人々の安全が脅かされています。その結果、有権者は政権に対して「ノー」と言っているのです。

岸田政権の支持率急落は、所得税減税策が「遅くて手ぬるい」とされることが原因とされていますが、その背後には欧米と同じく「行政の不作為」への国民の怒りがあるのではないでしょうか。この怒りは穏健な保守層に限らず広がっており、流行に乗った政治ではなく、国民の安全を守る政治を実現してほしいと願うのです。(フジテレビ上級解説委員・平井文夫)

Source Link