福岡・太宰府市で起きた主婦暴行死事件。この事件の真相を明らかにするため、テレビ西日本（TNC）は2年以上にわたり追跡報道を行いました。そして、その取材記録がノンフィクション本として書籍化され、2023年12月13日に発売されました。ここでは、TNCがこの事件を追い続けた理由や、事件前の経緯、佐賀県警に対する批判などが、取材チームの目線で詳細に描かれています。
マインドコントロールの恐怖
2019年10月20日、太宰府市のインターネットカフェの駐車場で、佐賀県基山町の主婦、高畑瑠美さん（当時36歳）の遺体が発見されました。瑠美さんの身体には、何か硬いもので殴られた痕や刃物で刺された痕が数多くありました。彼女の死因は外傷性ショックでした。
この事件で傷害致死などの罪で起訴されたのは、山本美幸元受刑者（当時40歳）とその交際相手の岸颯受刑者（当時24歳）の2人です。3人の関係性は通常のものとは異なります。瑠美さんは普通の主婦で夫と2人の子供がいましたが、事件の1カ月前から家族と離れ、山本元受刑者らと同居していたことが判明したのです。
瑠美さんの母親は、驚愕の真実を語りました。彼女は次のように言いました。
「瑠美がマインドコントロールされていたんじゃないかと思います。こういうことになる前に早く山本と引き離したかった。」
瑠美さんと山本元受刑者の接点は、瑠美さんの兄の金銭トラブルでした。山本元受刑者は、兄の借金の肩代わりを瑠美さん夫婦に求めました。それに応じないと山本元受刑者は、実家にヤクザが行くなどと脅し、夫婦を服従させました。そして、彼女らから10年以上にわたって700万円近くを搾り取ったのです。
事件の数か月前、瑠美さんには異変が起きました。彼女の母親は次のように証言しました。
「瑠美が2か月も無断欠勤を続けていたり、目がうつろだったりして、何かやってるんじゃないかと思ったんです。」
瑠美さんは真面目な人でしたが、交通事故を偽装して家族から400万円近くをだまし取りました。実はこの時、山本元受刑者は瑠美さんを支配下に置いていて、多額の金を彼女の家族から引き出そうとしていたのです。
瑠美さんの家族は、山本元受刑者の存在に気づき、事件の4か月前に佐賀県警鳥栖警察署に助けを求めました。しかし、警察は「家族間の問題」として取り合ってくれませんでした。
瑠美さんの母親は次のように述べました。
「警察は『事件にならないし、証拠もないし、家族内の問題だからできない』と言って、私たちを放置していました。」
そして、状況はますます悪化していったのです。
この事件は、普通の主婦がどのようにしてこのような悲劇に巻き込まれたのか、その真相に迫っています。テレビ西日本による追跡報道は、事件の背後に潜むマインドコントロールの恐怖を明らかにしました。
