衛星写真から見える北朝鮮の植樹事業、「国家の大計」のはずが…飢餓や経済難で乱伐も

北朝鮮の植樹事業には長い歴史があります。それは金日成主席の時代から、「国家百年の大計」と位置付けられてきたのです。しかし、最近の研究で明らかになったところによれば、この国家的な事業は順調ではないようです。では、その背景には何があるのでしょうか。北朝鮮内部の動きを衛星写真から分析している韓半島安保戦略研究院の映像分析センターが、その解析結果をお伝えします。

飢餓の中でも樹木保護した金正日総書記

北朝鮮を逃れた元朝鮮労働党幹部によれば、北朝鮮は金日成主席の時代から、労働新聞や宣伝映画で植林の重要性を訴え続けてきました。1990年代半ばの「苦難の行軍」の際、大量の餓死者が出る中、金正日総書記は「樹木と飢えは交換できない」と述べ、外貨や燃料作りのための森林伐採を禁じたと言われています。

しかし、北朝鮮の森林面積は減少の一途をたどっていました。韓半島安保戦略研究院の鄭聖鶴・映像分析センター長によれば、北朝鮮の山林面積は1970年代には約980万ヘクタールありましたが、2015年には約568万ヘクタールまで減少しました。

金日成主席の時代には、食糧増産のために山間地を開墾して段々畑を作りました。しかし、1990年代に入ると経済難が深刻化し、乱伐が進んだのです。

金正恩総書記は「全国の樹林化」を掲げ、様々な施策を実施しました。東部・江原道では年間に2000万株以上の苗木を栽培できる育苗場が設けられ、金正恩総書記も毎年3月の「植樹節」に自ら苗木を植える姿が報道されています。

植樹にノルマ、経済難で乱伐も

現在、北朝鮮の山林面積は緩やかな回復基調にありますが、その定着具合はまだわかりません。

2022年3月の「植樹節」の際、全国で数百万株の苗木が植えられたと報道されました。脱北者の証言によれば、地域や職場ごとに植樹しなければならない苗木の数にノルマが課されると言います。

ただし、元幹部によれば、「北朝鮮は岩山が多く、植樹する場合には肥料と水の安定供給が必要です。政治的なノルマをこなすだけで、山林の継続的な管理ができず、立ち枯れる苗木が多い」と語っています。

北朝鮮では、首都平壌中心部ではプロパンガスが一般的な調理手段ですが、それ以外の地域では「クモンタン」という練炭が使用されています。

北朝鮮の経済が好調だった頃は、国が家庭に石炭の原料である粉炭を配給していました。しかし現在は市場で購入するのが一般的です。しかし、電力不足や石炭の輸出が相次ぐと、練炭の供給に支障が出ることがあります。

1990年代の「苦難の行軍」の時にも、練炭が品薄になると、木を切って燃料にするケースが相次いだそうです。

金日成主席は、市民に対して「植樹の恩恵を受けるのは君たちではなく、君たちの孫たちだ」と語ったと言います。金正恩総書記の植樹事業が成功するかどうかは、安定した国家運営の継続に大きく関わってきます。

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