近年、中国では夏のレジャーとしてラフティングの人気が急速に高まっています。しかし、その陰で危険な状況での実施や事故が相次ぎ、観光客の安全が脅かされる事態が頻発しています。カメラが捉えた激しい濁流の中でのラフティングや、観光客が泥水まみれになる様子は、この人気アクティビティが抱える深刻な課題を浮き彫りにしています。
激しい濁流に挑む観光客、河南省での危険な体験
8月7日、中国・河南省の人気ラフティングスポットで撮影された映像は、その危険な実態を如実に伝えています。本来の爽やかなイメージとは裏腹に、川は茶色く濁り、まるで土石流のような激しい流れと化していました。ゴムボートに乗った観光客たちは、溢れ出る水が滝のようになった側面に激突し、ボート内に泥水が流入。ズボンが茶色く染まるほどの状況に陥っていました。このような極めて危険な状況下でなぜラフティングが続けられていたのか、安全管理のあり方が問われます。
中国河南省の人気スポットで濁流の中ラフティングする観光客のボート。茶色く濁った川と激しい水しぶきが、レジャーの危険な側面を示唆している。
人気の裏で多発する衝突と転覆、貴州省での「大渋滞」
中国では、夏休みの定番レジャーとしてラフティングを楽しむ人が増加しており、各地の渓谷には連日、大勢の客が押し寄せます。特に貴州省の渓谷では、多い日には6000人もの観光客が集まり、川がゴムボートで「大渋滞」する状況が常態化しています。この過密状態が、さらなるトラブルを引き起こしています。身動きが取れなくなったボートに後続のボートが次々と激突したり、中にはボートから転落する人や、一度ひっくり返ったボートに別のボートが突っ込み再び転覆するという悲惨な光景も繰り広げられていました。こうした事故は、単なるアクシデントとして片付けられない、運営体制の脆弱性を示唆しています。
中国貴州省の渓谷で発生したラフティングの「大渋滞」。多くのボートが互いに衝突し、夏休みの人気レジャーにおける安全管理の課題を浮き彫りにしている。
天候急変が引き起こした洪水、観光客の迅速な避難
河南省で発生した危険な濁流ラフティングの背景には、天候の急変がありました。地元メディアの報道によると、ラフティング中に大雨が降り出し、突発的な洪水が発生したとのことです。幸いにも、現場スタッフは状況を即座に判断し、全ての観光客を速やかに岸へ避難させたため、この事態による負傷者はいなかったと伝えられています。しかし、自然災害のリスクが高い場所でのレジャー活動には、事前の徹底した天気予報確認と、緊急時の迅速な対応計画が不可欠であることを改めて示唆する事例となりました。
中国におけるラフティング人気の高まりは、経済成長とレジャー志向の表れである一方で、安全対策の不備や、自然の猛威に対する意識の低さが、多くの事故や危険な状況を招いています。参加する観光客だけでなく、運営側もより厳格な安全基準を設け、自然状況に応じた適切な判断と対応を行うことが、今後の持続可能なレジャー産業の発展には不可欠となるでしょう。
参考文献
- FNNプライムオンライン
- イット! (2025年8月15日放送)