韓国政府が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄したことは、すでに日韓関係悪化の打撃を受けている観光業や流通業にとっては、さらなる逆風となりそうだ。韓国による今後の対応は予測できない面もあり、エネルギー業界では韓国からの灯油の調達に影響が出ることへの懸念も持ち上がるなど、日韓の経済関係の不確実性が高まっている。
日韓関係の悪化による影響が最も顕著といえそうなのが観光業だ。大手旅行会社のJTBでは8、9月の韓国から日本への旅行の予約状況が前年同月比で7~8割減。阪急交通社では、日本から韓国への旅行の予約が8月で13%減、9月も20%減となっている。韓国からの訪日客の減少は免税品の売り上げにも影響。日本百貨店協会の全国93店舗を対象とした調査では、韓国人客による7月の免税品の購入額が約10%減った。
日本政府は、韓国がGSOMIAの破棄に関連して、日本の輸出管理強化という「全く次元の異なる問題」を持ち出したとして批判。韓国政府の今後の対応は見通せないが、政府や企業の想像を超える対応を取る可能性もある。
こうした中、エネルギー業界では韓国が灯油の対日輸出を禁止することへの懸念も出ている。日本は灯油の約9割を国産でまかなうが、残り1割は輸入で、そのほとんどが韓国産。特に日本海側の都市部は韓国からの輸入が多く、仮に韓国が禁輸を打ち出すことになれば、新規の調達先の確保による販売価格の上昇要因になりかねない。また、日本海側への船による供給ルート確立などの対策を強いられることにもなる。
旅行大手関係者は日韓関係の悪化による影響を「GSOMIAの破棄が直接、観光客のさらなる減少につながるとは考えにくい」と述べるにとどめたが、悪影響は韓国政府の対応次第という面も強い。韓国に進出する日本企業にも不安が広まる可能性があり、日本貿易振興機構(ジェトロ)の佐々木伸彦理事長は23日、「韓国でビジネスする日本企業や関係者が適切な判断ができるように情報提供していきたい」と述べた。