北朝鮮内部:金正恩政権が賃金引き上げ、月収500円程度

北朝鮮の労働者

北朝鮮の国営企業や公務員の労働者の賃金が大幅に引き上げられたことが明らかになりました。この引き上げ幅は、前年に比べてなんと10倍以上にも上ります。支給方法は、一部の職場では電子カードが使われています。では、金正恩政権がこの破格の賃金引き上げをする目的は何でしょうか? これについて詳しくお伝えします。(カン・ジウォン/石丸次郎)

昨年末に北部都市で実施された引き上げ

北朝鮮当局によると、2023年11月から12月にかけて、北朝鮮の国営企業や公務員の労働者の賃金引き上げが行われました。この引き上げは、北部の都市全体で行われたものでした。

北朝鮮の食糧専売店

賃金引き上げの目的は食糧購入費用に充てること

この破格な賃金引き上げの目的は、北朝鮮の食糧専売店でのコメやトウモロコシの購入費用に充てることです。具体的な詳細は後ほど説明しますが、北朝鮮の最近の賃金体系について説明します。

2023年3月、咸鏡北道(ハムギョンプクド)と両江道(リャンガンド)で労賃調査が行われました。その結果、国営企業の一般労働者の賃金は、約1500~2500ウォン、下級幹部は約4000ウォン、課長や部長などの上級幹部は6000~8000ウォンでした。地方政府の幹部公務員の賃金は5000~8000ウォン程度でした。

この当時の為替レートは1000ウォンが約16円でした。つまり、最高給の8000ウォンでも約128円しかないのです。この時期の市場での食糧価格は、1キロ当たり白米が6000ウォン、トウモロコシが3000ウォン程度でした。ですので、公定の賃金は食糧を購入するためには十分ではない水準でした。ただし、パンデミックの影響で公務員には食糧配給が行われていました。

労賃体系は13年間ほぼ変わらず

2020年以前は、食糧配給が行われるのは一部の公務員や企業のみでした。大半の人々は日雇い労働などで現金を稼ぎ、市場で食糧などの必需品を購入して生活していました。例えば、パンデミック前は土木工事などの私的な日雇い仕事で1日1万ウォン程度を稼ぐことができました。

調査時点の賃金水準は、2009年11月に行われた「貨幣交換」以降、2倍程度に上昇しました。企業の裁量権が認められるようになり、利益を上げている企業では賃金が月30~50万ウォンになり、さらに白米や食用油、酒、肉などの支給が行われるところもありました。

ただし、教員の場合は例外です。2019年頃には月15,000~18,000ウォン程度に賃金が引き上げられ、食糧配給も行われるようになりました。生徒の保護者からの金品要求や収賄が問題となり、金正恩氏自らが待遇改善を指示したと言われています。

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