ウクライナ、西側に長距離ミサイル使用の許可を求める: モスクワへの圧力と高まる緊張

ウクライナは、ロシアとの和平交渉を有利に進めるため、西側諸国に対し、ロシア領深くに位置する目標を破壊できる長距離ミサイル「ストーム・シャドウ」の使用許可を求めています。しかし、この動きは、紛争が激化する可能性もあり、米国をはじめとする西側諸国の間で懸念を引き起こしています。

ウクライナの思惑

キーウの政府高官によると、ウクライナは「モスクワとサンクトペテルブルクを脅かす能力」をロシアに示すことで、和平交渉のテーブルに着かせることができると考えています。ロシア軍の主要拠点への攻撃をちらつかせることで、ロシア側に譲歩を迫るのが狙いです。

ウクライナは、東部戦線での苦戦が続く中、反撃に活路を見出そうとしています。ゼレンスキー大統領は、ロシアの民間人に対する無差別攻撃を非難し、「ウクライナの反撃は、遅かれ早かれ、我が国の生命と国民にとって危険の源となっているロシア連邦のあらゆる地点に到達するだろう」と警告しました。

西側諸国の懸念

米国は、ストーム・シャドウの使用がロシアの反発を招き、紛争がエスカレートすることを懸念しています。また、長距離ミサイルの精度に対する疑問や、ロシア軍の戦闘機がミサイルの射程外に配備されている可能性も指摘されています。

ドローン攻撃の効果と限界

ウクライナは、モスクワやヴォルゴグラード近郊のマリノフカ空軍基地など、ロシア国内の軍事施設に対するドローン攻撃を強化しています。これらの攻撃は、1回あたり100万ドルという低コストで行えるとされ、ロシアの戦闘機約300機の破壊を目指しています。

しかし、ドローン攻撃だけではロシアに十分な圧力をかけることは難しいとの見方もあります。キーウでは、ストーム・シャドウの使用によってロシアに軍事的な脅威を与えることで、和平交渉を有利に進められるという期待が高まっています。

専門家の見解

元英国国防アタッシェのジョン・フォーマン氏は、ウクライナはストーム・シャドウの使用に固執するのではなく、ドンバス地域の防衛に集中すべきだと指摘しています。ロシアは、ウクライナを消耗戦に引きずり込むことで勝利できると考えており、11月の米大統領選挙前にドンバス地方の要衝ポクロフスクを制圧することで、ウクライナが劣勢にあることを西側諸国に印象づけようとしている可能性があります。