10月10日、自民党の比例単独候補として立候補を目指していた杉田水脈前衆院議員の出馬断念が伝えられました。今回の騒動で注目すべきは、不可解な動きを見せた自民党山口県連の存在です。なぜ最初から公認が難しいと考えられていた杉田氏を推挙したのでしょうか?地元関係者の声からは、「県連には別の意図があった。杉田氏はだしに使われただけ」という声が上がっています。一体、山口県連の真の狙いとは何だったのでしょうか?
公認申請は吉田真次氏への牽制?
杉田氏は比例中国ブロック単独候補として2期当選してきましたが、自民党の内規では比例単独は原則「通算2回まで」と規定されており、そもそも公認される資格がありませんでした。さらに、裏金問題や党役職停止処分など、多くの問題を抱えていました。
山口県連内では、杉田氏を積極的に支持する声は少なく、むしろ過激な言動で度々県連上層部の頭を悩ませていたといいます。にも関わらず、なぜ県連は杉田氏の公認申請を行ったのでしょうか?
地元関係者は、その理由を「昨年4月の衆院山口4区補欠選挙で初当選した吉田真次氏を推したくなかったから」だと語ります。県連にとって吉田氏は目の上のたんこぶであり、杉田氏はその吉田氏への牽制として利用されたというのです。
安倍元首相の死去で激変した山口県の政治状況
この一件を理解するには、安倍晋三元首相が銃撃事件で亡くなった2022年7月にまで遡る必要があります。
安倍元首相の死去と、安倍家から後継者が出なかったことで、山口県の衆院選は新たな局面を迎えました。次期衆院選から山口県では10増10減の区割り変更が実施され、4つあった選挙区が3つに減ることが決まっていたのです。
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安倍元首相の存在が大きかっただけに、区割り変更は大きな混乱を招くことが予想されました。県連内では、消滅する4区の補選には、次の衆院選までの期間限定で、県議や市長などの長老を擁立するのが得策だと考えられていました。
しかし、この目論見は外れます。
吉田真次氏の登場と県連の思惑
そこに現れたのが吉田真次氏でした。
吉田氏は、安倍元首相の秘書を務めていた人物で、補選への出馬を表明します。県連としては、経験豊富な長老を擁立し、次の選挙への布石を打ちたいと考えていただけに、吉田氏の登場は予想外の出来事でした。
県連は吉田氏を支援せず、独自候補の擁立を目指しましたが、最終的に断念。吉田氏は自民党の支援なしに戦い、見事当選を果たしました。
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県連にとって、吉田氏は自分たちの意向を無視して当選した、まさに「目の上のたんこぶ」となったのです。
杉田氏出馬断念の背景と今後の展望
杉田氏の公認申請は、このような背景のもと行われました。県連としては、最初から杉田氏が公認される可能性は低いと理解した上で、吉田氏への牽制として利用したと考えられます。
今回の杉田氏の出馬断念は、県連の思惑通りに進んだと言えるでしょう。しかし、この一件は、山口県連の内部事情を浮き彫りにしたと同時に、今後の県連の在り方にも疑問を投げかける結果となりました。
今後、山口県連がどのようにして県内の政治状況を安定させ、来るべき衆院選に臨むのか、注目が集まります。