ウクライナ軍の撤退に見る戦略:重要拠点を「餌」にしたロシア疲弊作戦?

2024年10月2日、世界中のメディアが「ウクライナ軍、ウグレダルから撤退」と報じました。長きにわたり“難攻不落要塞”とされてきたウグレダルですが、2年8ヶ月に及ぶ攻防戦の末、ロシア軍が制圧しました。

広大な小麦畑とトウモロコシ畑が広がるウクライナ東部ドネツク州。その西側に位置する要衝の地、ウグレダル。鉄筋コンクリート製の中層アパートが密集するこの人工都市は、ロシア軍にとっては何としても落としたい拠点でした。しかし、ウクライナ軍の強固な抵抗により、度重なる攻撃も失敗に終わっていたのです。

膨大な犠牲を払いながらもウグレダルを制圧したロシア軍。しかし、ウクライナ軍の撤退は、果たしてロシア軍の猛攻に屈した結果なのでしょうか?

ゼレンスキー大統領やウクライナ軍のこれまでの戦略を振り返ると、今回の撤退には「真の狙い」が隠されている可能性が見えてきます。それは、重要拠点を敢えて“餌”としてロシア軍を長期間足止めし、出血を強いること。そして、ロシア国内の厭戦気分を高め、プーチン大統領に侵略行為を断念させることではないでしょうか。

市街地での籠城戦は、自軍にも犠牲が伴うものの、防御側に圧倒的に有利です。ロシア軍に無謀な突撃を継続させ、疲弊させることが狙いです。そして、タイミングを見計らって撤退し、後方の拠点都市に移動、再び籠城するという「遅滞作戦」を展開している可能性があります。

実際に、東部ドネツク戦線の状況を分析すると、このパターンが見えてきます。

  • バフムト:2022年5月から攻撃開始、2023年5月に完全制圧(約1年間)
  • アウディーイウカ:2023年6月から攻撃開始、2024年2月に占領(約9ヶ月間)
  • ウグレダル:2023年4月から攻撃開始、2024年10月に制圧(約1年半)

このように、ロシア軍は各都市の制圧に長期間を要しており、ウクライナ軍の抵抗による疲弊は明らかです。

ロシア軍の次の目標は、交通の要衝であるポクロウシクと予想されます。ウクライナ軍は、ここでも同様の戦略で対抗するのでしょうか?

ウクライナ東部ドネツク州ウグレダルの破壊された建物ウクライナ東部ドネツク州ウグレダルの破壊された建物

ウクライナ軍の撤退は、新たな局面を迎えたウクライナ侵攻。今後の戦況に、世界中の注目が集まります。