中国「一帯一路」の影で高まる反発、テロの標的にされる中国人と失速する巨大プロジェクト

近年、中国が国家戦略として推し進める巨大経済圏構想「一帯一路」に対する反発が、世界各地で高まりを見せています。特に、プロジェクトの恩恵を受けられない人々からの不満が噴出し、中国人がテロの標的にされる事件も発生しています。

パキスタンで頻発する中国人標的テロ

2024年10月6日、パキスタン南部のカラチにある国際空港付近で、中国人たちが乗車する車列に爆弾テロが発生し、中国人2人を含む3人が死亡、10人以上が負傷しました。

パキスタンで発生した爆弾テロの様子パキスタンで発生した爆弾テロの様子

事件後、パキスタン南西部バルチスタン州の分離独立を主張する反政府武装組織「バルチスタン解放軍」が犯行声明を出し、中国人を狙ったと明らかにしました。

バルチスタン州は、鉄鉱石や石炭、天然ガスなどの資源が豊富な地域ですが、失業率や貧困率はパキスタン国内でも最悪レベルです。バルチスタン解放軍は、中国が推進する「一帯一路」プロジェクトによって、これらの資源が搾取され、現地の住民に利益が還元されていないことに強い不満を抱いています。

過去にも、バルチスタン解放軍は、カラチにある孔子学院や中国領事館を標的にしたテロ事件を起こしており、中国政府に対して、中国人の安全確保を徹底するよう要求しています。

アフリカでも広がる中国企業への反発

中国企業に対する反発は、アフリカ諸国でも広がっています。

2020年6月には、ザンビアの首都ルサカ郊外で、中国企業の中国人幹部3人が、現地の従業員2人に殺害される事件が発生しました。背景には、不当な労働条件や賃金未払いなど、中国人幹部による現地従業員への不当な扱いが横行していたという実態があります。

失速する「一帯一路」、プロジェクトの35%で問題発生

米ウィリアム・アンド・メアリー大学エイドデータ研究所の調査によると、中国がこれまで実施してきた「一帯一路」プロジェクトのうち、全体の35%で、労働違反や汚職、環境汚染などの問題が発生していることが明らかになっています。

一帯一路のイメージ一帯一路のイメージ

マレーシア、カザフスタン、ボリビアなどでは、巨額のプロジェクトが中止に追い込まれており、専門家の間では、「一帯一路」は今後失速するとの見方が強まっています。

高まる反中国感情、中国経済と安全保障に影響も

「一帯一路」は、中国が提唱する巨大経済圏構想ですが、その実態は、資源の搾取や不当な労働条件など、多くの問題を抱えています。

現地住民の不満が高まり、反中国感情が強まれば、中国企業の進出は困難になり、中国経済にも大きな影響を与える可能性があります。

また、テロの標的となるリスクも高まり、中国人の安全確保は、中国政府にとって喫緊の課題となっています。