オーストラリアのシドニーで22日、先住民の男性活動家がイギリス国王夫妻の訪問に抗議し、逮捕された。チャールズ国王夫妻はこの日のシドニー訪問が訪豪の最終日。前日には首都キャンベラの議事堂で先住民の議員が国王に面と向かって「あなたは私たちの国王ではない」と抗議していた。
シドニーでは22日、湾に面するオペラハウスを前に大勢が、同日午後に予定される国王夫妻の到着を待っていた。
ブリスベン出身で、先住民の権利のために活動してきたウェイン・ウォートンさんは、「彼は私の国王じゃない」「盗人の王だ、うそつきの王だ」「お前たちの手は血まみれだ」など叫び続け、移動するよう求めた警察の要請に応じなかったことから、その場で逮捕された。
オペラハウスの前で国王夫妻を待っていた人の中には、イギリス国旗の小旗を手にした人が大勢いた。その人たちは、ウォートンさんが「私の王じゃない」と叫ぶと、「God Save the King! (神よ国王を救いたまえ)」とイギリス国歌にもなっているスローガンで応じた。
先住民クーマのウォートンさんが逮捕され、警察車両に乗せられると、集まっていた人たちは拍手した。
ウォートンさんはその後も、イギリス国旗を振る人たちに向かって「お前たちは勝たない」、「お前たちは犯罪者だ」と叫んで応じた。
ウォートンさんは20日にも、シドニーの教会で日曜礼拝に出席した国王夫妻に向かって、教会前で「この国の主権者である民に対する罪について、国王の責任を追及しなくてはならない」、「この国の違法な占領は認めない」などと連呼していた。
■批判と称賛
オペラ・ハウスの前に集まった数百人の多くは、22日早朝から並んでいた。イギリス国旗を肩にかけたり、王室をテーマにした装飾品を身に着けたりする人もいた。
「私たちは自分たちの国と、国のすべての人を祝いたい」のだと、キャレン・クラークさんは話した。幼い息子のベンジャミンさんとハリソンさんは、王冠やマントに似せた衣装を着ていた。
「私たちは国王と共に育って、息子たちと国王の誕生日を祝ってきた。一番いい服を着ておめかしして、お茶の時間にするのはとても楽しいことです」
ベッティーナ・ベスエルさんは、「父はリヴァプール出身で、私はずっと王室に興味をもってきた」と話した。
ベスエルさんに同行してきた友人のタジャ・シェパードさんは、21日に先住民のリディア・ソープ上院議員が議事堂で国王に抗議した様子をテレビで見たものの、感心しなかったという。
「少し失礼じゃないかと思ったけれども、先住民の人たちにとって大事なことを言ったのだろう」、「でも彼女のふるまいは不適切だったと思う」と、シェパードさんは話した。
チャールズ国王はこの日、シドニー市内で先住民センターを訪れ、先住民の長老たちと会談した。
ソープ議員が議事堂で国王に抗議したことについて、一部の先住民活動家は勇気ある行動だとたたえている。その一方、複数の著名な先住民オーストラリア人は「恥ずかしい」「無礼だ」と批判している。
また連邦議会の議員たちは口々に、ソープ議員の行動を批判した。
(英語記事 Aboriginal protester arrested during King’s Sydney tour)
(c) BBC News