ベニシアは「2、3か月の命」と医師に告げられ決意…僕が知らなかった、病室で訴え続けていた言葉


梶山正の「ベニシアと過ごした最後の日々」

【写真3枚】懐かしのベニシアさん 京都・大原の築100年を超える古民家で、花に囲まれ、ハーブを摘み、パンをこねる

僕の声を聞いたら…

 日本での生活はかれこれ51年になり、そんなベニシアがいま、祖国から遠く離れた日本で死にかけているのです。

 電話のベルが鳴りました。

 「バプテスト病院の看護師です。今からベニシアさんに会いに、病院へ来てもらえますか?」

 「え? コロナで面会禁止だと言われましたけど……」

 「ベニシアさんは落ち着かず、不安でおびえています。安心させるために来てください」

 だが、僕はもう酒を飲んでしまった。今日は運転ができない。

 翌日、僕はバプテスト病院にバイクを走らせて、午後3時ちょっと前に到着しました。リハビリ担当の理学療法士が、ベニシアを車椅子に乗せて病院の駐車場を散歩させると聞いていたのです。面会禁止中なので病室には入れません。

 僕は森に囲まれた広い病院の駐車場で、車椅子に乗ったベニシアの姿を見つけました。

 「ベニシア、正だよ。会いに来たよ」。目は見えないが、声でわかったのでしょう。不安げな様子からうれしい表情に変わりました。看護師と事務員が僕たちに合流してくれました。気を使って見に来てくれたようです。やがて湊(みなと)先生もやって来ました。

 それまで約1年1か月の間、ベニシアが滞在したグループホームでは、しばらく面会禁止が続いた後に会いに行くと、言葉が出なくなり、歩けなくなっているベニシアの様子に困惑しました。禁止が解かれてから毎日面会に行くと、目やにがついていたり、爪が伸びたままになっていたりすることもありました。そして今回、コロナによる面会禁止で44日ぶりに会ったベニシアは、驚くほど痩せて弱々しくなっていたのです。

 そんな経験をした後に巡り合った病院です。ここバプテスト病院の人たちは、患者と家族に対して、常に気をかけてくれます。



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