開成高校の絆が結ぶ政界と官僚:岸田元首相と嶋田元事務次官

開成高校出身者による政官界の強固な繋がりは、しばしば注目を集めています。今回は、岸田文雄元首相と、その首相筆頭秘書官を務めた嶋田隆元経済産業事務次官の関係に焦点を当て、その影響力に迫ります。

経産省出身者が語る「嶋田先輩の存在感」

「嶋田先輩が官邸中枢にいたからこそ、エネルギー政策も産業政策も思い通りに進めることができた」

これは、岸田政権下で経済産業省の事務方トップを務めた飯田祐二事務次官(当時)に近い関係者の言葉です。長年、経済産業省の影の実力者として暗躍してきた嶋田氏の存在は、岸田政権における同省の影響力拡大に大きく貢献したとされています。

福島原発事故後の「呪縛」からの解放

嶋田氏は、岸田氏と同じく開成高校の出身。2人を繋いだのは、同じく開成OBである香川俊介元財務事務次官だったと言われています。

嶋田氏は、1998年に与謝野馨通産相(当時)の大臣秘書官を務めて以来、長年にわたり与謝野氏の政務秘書官として、消費増税や社会保障改革、経済成長戦略などに携わってきました。

岸田氏は、そんな嶋田氏の経歴と手腕を高く評価し、首相就任後の2021年秋、官邸の重要ポストである首相筆頭秘書官に抜擢しました。

岸田文雄元首相岸田文雄元首相

安倍政権でも実現できなかった原発政策の大転換

「与謝野氏とは違い、自ら実現したい政策がない」

これは、岸田氏の性格を表す、永田町関係者の言葉です。嶋田氏は、そんな岸田氏の意向を汲み取り、経済産業省の長年の懸案事項解決に尽力しました。

その象徴的な成果が、安倍晋三政権下でも実現できなかった原発の運転期間延長や建て替え、新増設を可能にする政策転換です。

嶋田氏は、「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」や「経済安全保障」をキーワードに、本来は脱炭素化と相反する石炭火力発電の延命も図りながら、岸田氏に原発回帰の旗を振らせました。

経産省主導で進む「GX2040ビジョン」

岸田氏が首相を退陣した後も、嶋田氏の invloed は残り続けています。

2023年8月末に開催されたGX実行会議では、年末に取りまとめられる予定の国家戦略「GX2040ビジョン」のたたき台が、経済産業省によって提示されました。

このビジョンには、原発推進やアンモニア混焼発電など、石炭火力発電の延命策について、事業者への公的支援拡充を図る方針が盛り込まれています。

開成高校出身者による強固な繋がりと、嶋田氏の卓越した政策手腕は、岸田政権後も日本のエネルギー政策に大きな影響を与え続けることは間違いありません。