欧州自動車市場の低迷とVWグループの苦闘
世界第2位の自動車メーカーであるフォルクスワーゲン(VW)グループが、苦境に立たされています。欧州市場の低迷、特に電気自動車(EV)の販売不振が大きな原因です。
ドイツでは、昨年12月に政府がEV普及政策を転換し、購入補助金を廃止しました。この政策のブレが、EV需要の低迷に拍車をかけています。
VWグループは今年9月、欧州での販売台数減少と中国事業の不振を受けて、経費削減策の強化を発表しました。オリバー・ブルーメ社長は、これまでタブー視されてきた国内工場の閉鎖や従業員の解雇も視野に入れていることを明らかにしました。
コア・ブランドの低収益性が経営を圧迫
VWグループの最大の課題は、主力車種であるゴルフやパサートなどを生産・販売するコア・ブランド部門の収益性の低さです。
2024年上半期、VW乗用車部門の営業利益率はわずか2.3%と、グループ内のポルシェ(15.7%)やアウディ(6.4%)に大きく水をあけられています。競合するルノー(8.1%)やステランティス(10%)と比べても、その低さは際立っています。
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VWグループは、大規模なリストラによって100億ユーロ(約1兆6000億円)の経費削減を目指しています。これにより、VW乗用車部門の営業利益率を6.5%まで引き上げる計画です。
コロナ禍からの回復遅れと過剰生産能力
欧州の自動車市場は、コロナ禍前の水準に回復していません。VWグループのアルノ・アントリッツ財務担当取締役は、「欧州の自動車市場は、コロナ禍前に比べて年間約200万台規模で縮小するだろう。VWの販売台数も約50万台減少する見込みだ」と述べています。
VWグループの販売台数は、2019年の1095万6000台から2023年には936万2000台にまで落ち込んでいます。このうち、コア・ブランドであるVW乗用車部門の販売台数減少は66万1000台にのぼります。
VWグループはドイツ国内に10カ所の主要工場を構えていますが、コア・ブランド部門では2つの工場が過剰になっていると言われています。アントリッツ取締役は、コア・ブランド部門は以前から売上高が費用を下回っており、赤字状態であることを明らかにしました。
今回のリストラは、コア・ブランド部門の過剰な生産能力を削減することが目的です。
VWの未来は?
VWグループは、今回のリストラによって収益性を改善し、EVシフトを加速させることができるのでしょうか。今後の動向に注目が集まります。