ロシア軍は16日未明、ウクライナ全土に向けて多数のドローン(無人機)を発射し、ドニプロペトロウスク州クリブイリフを含む4州が激しい攻撃に見舞われました。ウクライナ当局によると、ゼレンスキー大統領の出身地であるクリブイリフも標的となり、今週に入って最大規模の攻撃となりました。
攻撃の規模とウクライナの防空能力
ウクライナ空軍の発表によれば、今回の攻撃には長距離ドローン約400機とミサイル1発が使用されました。特に激しい爆撃を受けたのはクリブイリフ、ハルキウ、オデーサ州の一部地域です。ウクライナの防空部隊は、飛来した無人機のうち345機を迎撃または無力化に成功し、被害の拡大を食い止めました。
クリブイリフにおける壊滅的被害
クリブイリフの軍行政府トップは、今回の攻撃を「開戦以来最大」と表現しました。同市には弾道ミサイル1発と無人機28機が使用され、これにより市内で複数の大規模な火災が発生。広範囲で停電や断水が引き起こされるなど、市民生活に甚大な影響が出ました。
ロシアのドローン攻撃により発生した火災の消火活動を行うウクライナの救急隊員
ゼレンスキー大統領は、ロシアがクリブイリフ市内のエネルギーインフラを意図的に標的としたことを強く非難し、この攻撃で少なくとも15人が負傷したと発表しました。大統領は自身のSNS「X」を通じて、「ロシアは戦略を変えていない。このテロに効果的に対抗するには、より多くの防空システム、迎撃ミサイル、そして断固たる決意をもって、体系的に防衛を強化する必要がある」と述べ、国際社会にさらなる支援を求めました。
ハルキウとその他の地域への影響
ウクライナ東部の主要都市ハルキウでも、壊滅的な攻撃が報告されています。ハルキウの市長は、同市がわずか14分間で16回もの攻撃を受けたと明らかにしました。ウクライナ当局の最新情報によると、過去24時間でスーミ州で1人、ハルキウで2人の市民が死亡し、負傷者は合計38人に上りました。こうした犠牲者の発生は、ロシア軍が引き続き民間インフラや都市部を無差別に攻撃している現状を示しています。
米国の政策転換と国際社会の動向
今回のロシアによる大規模攻撃は、米国政府がウクライナへの支援政策で転換期を迎える中で発生しました。特に注目されるのは、米国のトランプ大統領がウクライナ情勢に関して、ロシアのプーチン大統領へのいら立ちを募らせている点です。
トランプ氏は14日、ウクライナに対し北大西洋条約機構(NATO)を通じて地対空ミサイルシステム「パトリオット」を供与すると発表しました。さらに、ロシア産原油を購入する国に対して「二次関税」を課すと警告し、ロシア政府への経済的圧力を強める姿勢を示しました。かつてはプーチン氏を称賛する発言も多かったトランプ氏ですが、自身の停戦提案がロシアにほとんど無視されていることに怒りをあらわにしており、今後の米国の対ロシア・ウクライナ政策が戦況に与える影響が注視されます。
結論
ロシアによるウクライナへの大規模ドローン・ミサイル攻撃は、ウクライナの主要都市に甚大な被害と多数の死傷者をもたらし、特にクリブイリフではインフラが深刻な打撃を受けました。ウクライナは防空システムのさらなる強化を訴えており、国際社会からの継続的な支援が不可欠です。この攻撃は、米国の対ウクライナ政策、特にトランプ大統領の動向が変化する中で行われたことから、今後の国際情勢、特にロシア・ウクライナ紛争の展開に大きな影響を与える可能性があります。
参考文献:
- CNN報道 (Yahoo!ニュース掲載記事)