朝日出版社、M&A騒動の真相:創業者の遺族による強引な売却劇に社員たちがストライキ

語学教材でお馴染みの朝日出版社、売却騒動で揺れる

英語学習誌「CNN ENGLISH EXPRESS」や数々の人気書籍を出版する中堅出版社、朝日出版社が、M&Aによる会社売却問題で揺れています。創業者の遺族が、経営陣の反対を押し切って株式譲渡契約を締結。取締役全員が解任され、会社は混乱に陥っています。一体、朝日出版社で何が起こっているのでしょうか?

創業者の死後、表面化した遺族との確執

騒動の発端は、昨年4月に訪れました。長年、会社を率いてきた創業者がこの世を去り、妻と娘が株式を相続したのです。しかし、創業者は生前、家族と長く別居しており、遺族と会社との間には深い溝がありました。

経営陣は、会社の安定経営のため、自社株買いを検討していました。しかし、その過程で、10億円という巨額の資金が必要となることが判明。会社が所有する東京・九段下の自社ビルや遺族の自宅など、複数の不動産を売却する必要に迫られました。

不透明なM&A、そして取締役全員解任

事態が急変したのは、今年5月のことでした。遺族側のファイナンシャルアドバイザー(FA)から、ある合同会社による買収の意向表明書が届いたのです。提示された株式代金は、わずか4億6600万円。経営陣は「会社価値を大きく下回る」「もっと好条件の買い手がいるはずだ」と反発し、交渉を続けました。その後、別の印刷会社から7億円の買収提案もありましたが、遺族側は8月末、当初の合同会社との契約を強行。譲渡額は8億円を超えるとされています。

さらに、遺族側のFAは、朝日出版社が所有する遺族の自宅を約1億円で妻に売却するよう、経営陣に要求。経営陣は売却自体には前向きでしたが、「長年、連絡を取っていない妻本人の意思確認が必要だ」と主張しました。しかし、FAを通じて面会を求めても、妻は拒否。最終的に、FAは「不動産売買に応じないなら全員解任する」と、一方的に通告してきました。

9月11日、登記簿上では、遺族2人を含む3人が新たに取締役に就任。しかし、新代表は入院中で、娘も会社に姿を見せませんでした。FAが連れてきた「新代表の代理」という人物が、銀行印などを要求してきましたが、会社側はこれを拒否。株式譲渡はまだ完了していません。

会社の未来を案じる社員たち、ストライキを決行

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突然の経営陣の解任に、社員たちは不安を募らせています。35人が加入する労働組合は、9月中旬から団体交渉を申し入れ、10月16日にはストライキ権を確立。「一方的な解任の理由を説明してほしい」「会社の将来はどうなるのか」と訴えています。しかし、新役員3人は、交渉のテーブルにも着こうとしません。

解任された小川洋一郎前社長は、「株式を誰に売るかは株主が決めることだが、従業員のことも考えてほしい。なぜ今の買い手にこだわるのか、説明してほしい」と訴えています。

一方、遺族側の代理人弁護士は、「労組への対応は新代表の代理に任せており、対応が進むよう努めている」と回答。妻の意思確認については、「FAや司法書士立ち会いのもと、対面で行った」と説明しています。また、買い手については、「業績、保有資産、条件提示などを踏まえ、適正かつ妥当な譲渡額だと判断した」と主張しています。

遺族側のFAは、「限られた時間の中で、売却金額の最大化に努めた」とコメント。朝日出版社の現状については、「株主の売却の意思決定に旧経営陣が同意できず、現状を招いている。全関係者が納得する理想的なM&Aになっていないのは残念だ。早期に経営が安定化することを願っている」と述べています。

朝日出版社の未来は、今、大きな岐路に立たされています。従業員の声は届くのでしょうか? 会社の経営は正常化されるのでしょうか? 今後の動向に注目が集まります。