JR東日本「最短路線」の謎:わずか5.5kmの赤羽線が秘める意外な顔

日本全国には、都市間を結ぶ長距離路線から、数キロ程度の短い距離を走る路線まで、多種多様な鉄道路線が存在します。その中でも、特に興味深いのが、JR東日本管内で「最も短い」と称される路線、赤羽線です。わずか5.5キロという短さでありながら、東京23区北部という重要なエリアを走り、日常的に多くの人々に利用されています。しかし、その知名度は一般の利用者にはほとんどなく、なぜか多くの人がその路線名を知らないという不思議な実態があります。

JR東日本「最短路線」赤羽線の実態

JR東日本で営業キロ(以下同)が最も短いとされるのが赤羽線で、その長さはたった5.5キロです。この路線は池袋駅と赤羽駅を結び、東京都北部の重要な交通網の一部を担っています。しかし、その路線名が一般に浸透していないのは、JR東日本がこの区間を「埼京線」として案内しているためです。

かつて赤羽線は独立した路線として存在し、その名称で案内もされていました。しかし、1985年に赤羽駅と大宮駅を結ぶ新線が開業して以降、赤羽線は埼京線に組み込まれ、その一部として運行されるようになりました。現在の埼京線は、大崎駅から大宮駅までの全長36.9キロに及び、その大部分の列車が赤羽線を越えて直通運転しているため、利用者の感覚では赤羽線が「短い路線」という印象は薄れています。それでも、個別の路線としてはJR東日本で最短であることに変わりはありません。

東京23区北部を走るJR東日本赤羽線の列車東京23区北部を走るJR東日本赤羽線の列車

首都圏に点在する「隠れた短距離路線」

JR東日本では赤羽線に次ぐ2番目の短距離路線として、横浜市内を走る鶴見線が挙げられます。総延長は9.7キロですが、鶴見駅から扇町駅に至る「本線」の他に二つの支線を持つのが特徴です。その中でも、武蔵白石駅から大川駅までを結ぶ大川支線は、わずか1.0キロ。支線を含めた場合、首都圏のJR営業線の中で最も短い区間となります。

さらに短い区間として、東北本線と仙石線の接続線も特筆すべきです。「仙石東北ライン」の列車が走行する松島駅から高城町駅間の線路は、総延長がわずか0.3キロしかありません。これは、新幹線「はやぶさ」と「こまち」を連結した17両編成(約402メートル)の長さにも満たない、非常に短い区間です。

一方で、支線を単独で計上せず、現在も独立した路線名として案内されており、かつ途中で線路の分岐がない路線という条件であれば、拝島駅から武蔵五日市駅を結ぶ五日市線が最有力候補となります。その総延長は11.1キロで、東京の大動脈である山手線の約3分の1程度の長さです。

これらの事例は、日本の鉄道路線が単に長距離を移動するためだけでなく、地域に密着した多様な形態で人々の生活を支えていることを示しています。特に、赤羽線のように歴史的背景によってその存在感が薄れている路線も、鉄道網全体の重要な一部として機能し続けているのです。