2019年、東京都江東区で発生した「アポ電」強盗致死事件。80歳の女性が自宅に押し入られ、窒息死したこの事件は、社会に大きな衝撃を与えました。2024年10月22日、東京地裁で行われた再審で、須江拓貴被告(27)、小松園竜飛被告(33)、酒井佑太被告(28)の3人に無期懲役の判決が言い渡されました。
事件の概要:アポ電から強盗、そして悲劇へ
事件は2019年2月28日に発生。須江被告らは、宅配業者を装って女性の自宅マンションに侵入しました。事前に電話で資産状況などを聞き出す「アポ電」で、女性が一人暮らしであることを確認していたとみられています。
部屋に押し入った3人は、女性の四肢を拘束し、口を粘着テープで塞いで金品を探しました。しかし、何も見つけられずに逃走。暴行を受け、放置された女性は、そのまま息を引き取りました。
裁判の経緯:死因をめぐる攻防と新たな事実
当初の裁判では、検察側は女性の死因を「首の圧迫によるもの」と主張しました。一方、弁護側は「慢性心不全の急性増悪」の可能性を指摘し、争われました。結果として、2021年の第一審判決では、須江被告に懲役28年、小松園被告と酒井被告に懲役27年の判決が言い渡されました。
しかし、控訴審では、女性の死因に関する事実認定に誤りがあったと判断され、審理のやり直しを命じられました。
再審判決:「悪質極まりない犯行」と断罪
2024年10月22日に行われた再審では、これまでの裁判で明らかになった事実関係に加え、須江被告らが本件以外にも、長野県佐久市で発生したブランドショップでの窃盗事件など、複数の事件に関与していたことが新たに判明しました。
これらの事実を踏まえ、裁判所は「被告人らは、安易に金品を得ようとして犯行をエスカレートさせていった。その犯行態様は悪質極まりなく、刑事責任は誠に重い」と断罪。3人に無期懲役の判決を言い渡しました。
高齢者を狙った卑劣な犯行、社会に突きつける課題
今回の事件は、「アポ電」という手口で高齢者を狙った卑劣な犯行でした。近年、高齢者を狙った犯罪は後を絶たず、社会問題となっています。
今回の判決は、このような犯罪に対する司法の厳格な姿勢を示すとともに、改めて高齢者の安全確保が重要な課題であることを私たちに突きつけています。