裏金問題への国民の審判がどう出るのか注目される10月27日投開票の衆議院選挙。自民党が派閥の政治資金パーティで集めたカネを所属議員に還付したいわゆる“裏金”の総額は5年で10億円近く。使い道は飲食費や人件費に加え、選挙にも多額のカネがつぎ込まれたとされる。
さらに、裏金事件で今回の選挙に非公認となった候補者にも党から2000万円が提供されたことがわかり批判を浴びている。選挙をそれなりに戦うには相応のカネが必要と言われるが、実際どのくらいかかるのか。候補者を密着した。
「公認料」は300万円
「政治改革をしなくてはなりません。裏金政治を許しません!」
選挙戦初日となった平日の昼間、選挙カーから横浜市民に向けてこう訴えたのは、神奈川県内の小選挙区から出馬する野党公認候補のA氏だ。スピーカーから流れる肉声を聞き、沿道から手を振る人も目立つ。
A氏の選挙区は、自民、立憲民主、維新、自民、共産、参政の計5人の立候補者がひしめく。
小選挙区に立候補するにはいくらかかるのか。
まず、国に治める「供託金」として300万円。加えて比例選にも重複立候補する場合は計600万円が必要になる。公認候補のA氏の場合、供託金は党が出す。このお金は得票数が没収ラインを割らなければ戻ってくる。そして党から事実上の選挙資金となる「公認料」が支給される。政党によって制度や金額は異なるが、A氏には300万円が支給された。
多数の立候補者を抱える政党では、用意する供託金や公認料を合わせると選挙時の支出は億単位になる。当初、A氏の所属する政党では、現職の公認料は後払いとの話も出ていたという。そうなると候補者自ら選挙資金の金策に走らなくてはならない。元銀行員だったA氏は、金融機関は選挙資金の融資には厳しいことを知っているため、金策をどうするかで真っ青になったそうだ。
結局、公認料と「餅代」と称する政治活動のための支援金が党から支出され、それにA氏の政治団体で蓄えていた資金などを足すと、供託金や後述する公費負担分を除いた今回の選挙に使える予算はおよそ500万円程度になった。通常は800万円程度かかると言われ、裏金が加われば数千万とも言われる選挙費用と比べればかなり抑えめだ。