ハリス副大統領支持を表明できず、論説委員長が辞任ーーロサンゼルス・タイムズで何が?

カリフォルニア州を拠点とする有力地方紙、ロサンゼルス・タイムズで、論説委員長が辞任するという異例の事態が発生しました。発端は、11月に行われるアメリカ大統領選挙に関する社説を巡る意見の対立でした。

社説掲載を巡る対立

辞任したのは、論説委員長のマリエル・ガーザ氏。ガーザ氏は、次期大統領選で民主党のハリス副大統領を支持する社説を執筆し、掲載を求めていました。しかし、新聞社のオーナーであるパトリック・スーン・シャン氏が、特定の候補者を支持する社説の掲載を拒否。ガーザ氏は、オーナーの決定に抗議し、辞任という道を選んだのです。

「沈黙は共犯」 ガーザ氏の主張

ガーザ氏は、コロンビア大学が発行するジャーナリズム研究誌「コロンビア・ジャーナリズム・レビュー」の取材に対し、「沈黙を続けることに納得できない」と辞任の理由を説明。「危険な時代において、沈黙を守ることは単なる無関心ではなく、共犯だ」と、自らの信念を表明しました。

ロサンゼルス・タイムズの論説委員長を辞任したマリエル・ガーザ氏ロサンゼルス・タイムズの論説委員長を辞任したマリエル・ガーザ氏

オーナーは「事実ベースの分析」を要求

一方、オーナーのスーン・シャン氏は、自身の見解をX(旧ツイッター)で公表。論説委員会に対しては、「各候補者の政策を事実に基づいて分析すること」などを求めていたと説明。「論説委員会は、この方針に従わず沈黙を選んだため、私はその決定を受け入れた」と述べ、ガーザ氏の主張に反論しました。

アメリカの新聞社と大統領選挙

アメリカでは、新聞社が社説などで特定の候補者への支持を表明することは一般的です。例えば、ニューヨーク・タイムズは9月に掲載した社説で、ハリス副大統領を「唯一の愛国的な選択肢」と表明しています。

ロサンゼルス・タイムズも、2008年以降の大統領選では、一貫して民主党候補を支持してきました。しかし、2018年にスーン・シャン氏が買収して以降、その方向性が変化している可能性も指摘されています。

言論の自由と報道のあり方が問われる

今回のロサンゼルス・タイムズの騒動は、言論の自由、報道のあり方、そして新聞社とオーナーの関係など、多くの課題を浮き彫りにしました。今後のアメリカメディアの動向に注目が集まります。