ウクライナ紛争、北朝鮮住民の認識は?
2022年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻。激しい戦闘が続く中、北朝鮮は数千人規模の軍部隊をロシア側へ派遣したとの情報が、韓国や欧米諸国から上がっています。当初は否定していた北朝鮮とロシアですが、近年ではその事実を認めない状況となっています。
しかし、情報統制が厳しい北朝鮮国内では、この事実はどのように受け止められているのでしょうか?北朝鮮北部に住む住民への取材から、徐々にロシアへの派兵情報が広まりつつある実態が見えてきました。
咸鏡北道に住む労働党員のA氏によると、韓国国家情報院が北朝鮮軍のロシア派兵情報を公表した当初は、「まったく知らなかった。噂も聞いたことがない」とのことでした。軍部隊にも普段と異なる動きは見られないと話します。両江道の住民B氏も同様に「全く聞いたことがない」と回答。
そもそも北朝鮮では、ウクライナ紛争自体に対する認識が曖昧なままです。B氏は、「国家間の戦争ではなく、旧ソ連を構成していたウクライナとの間の民族紛争、あるいはロシアの内戦だと思っている人がほとんどだと思う」と語っています。
ロシア側の死者数が7万人を超えるなど、具体的な戦況は一切報じられていません。さらに、パンデミック以降の経済混乱で生活が困窮しているため、遠い欧州での戦争に関心を持つ余裕もないのが現状です。
兵士の親から明かされるロシア派兵の実態
しかし、時間の経過とともに、北朝鮮国内でもロシアへの派兵情報が少しずつ広がりを見せています。両江道に住むC氏は、「ロシアに軍隊を送っていることは聞いた。ここでも知っている人が増えている」と証言してくれました。
C氏によると、息子を軍隊に送っている知人から、ロシア派兵の情報を得たとのこと。その知人の息子は22歳の兵士で、毎月送金業者を通じて2〜300中国元を受け取っていたそうですが、息子から「部隊がロシアに行くことになったので、送金を止めてほしい」と連絡があったといいます。軍事機密にあたるため、公にはできないと語っていたそうです。
北朝鮮では、男子に8年間の兵役が義務付けられています(兵種によってはさらに長期間)。ミサイル関連など一部の部隊を除き、食事の質は悪く、栄養失調になる兵士も少なくありません。心配した親たちは、部隊近くの業者に手数料を払い、息子が外出時にパンや餅などを食べられるようにお金を託すのが通例となっています。
2020年のコロナパンデミック以降、軍の統制はさらに厳しくなり、携帯電話の使用は禁止、休暇もなかなか認められない状況が続いています。
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これらの情報から、北朝鮮当局が厳しい情報統制を敷く中で、ロシアへの派兵は水面下で着実に進められている可能性があります。今後の動向に注目する必要があります。