「移住促進」の光と影:地域おこし協力隊制度の現状と課題

地方移住の現状

地方移住を推進し、地域活性化の担い手として期待される「地域おこし協力隊」。2009年の制度開始以来、多くの若者が都市部から地方へと移り住み、地域に新たな風を吹き込んできました。

「移住促進」の光と影:地域おこし協力隊制度の現状と課題

しかし、15年目を迎えた今、この制度は大きな転換期を迎えています。自治体間での獲得競争の激化、移住後の定住の難しさ、そして新型コロナウイルス感染拡大の影響によるテレワークの普及など、様々な要因が複雑に絡み合い、制度の未来は決して楽観視できるものではありません。

地域おこし協力隊のリアルな声

長野県下伊那郡泰阜村に移住し、こんにゃく製造販売会社を経営する長尾透さん(63)は、地域資源を生かした起業の難しさについて語ります。

地元産のこんにゃく作りにこだわりながらも、経営は厳しい道のり。都市部での会社員経験を生かそうとするも、価格設定や販路開拓など、初めての経験に戸惑う日々が続いたと言います。

「ビジネス経験が浅い移住者にとって、実践的な経営ノウハウを学べるサポート体制が必要です」と長尾さんは訴えます。

自治体側の課題と移住希望者とのミスマッチ

地域おこし協力隊の受け入れ側である自治体にも課題は山積しています。

木曽郡上松町で協力隊員として活動していた徳永久国さん(33)は、任期中に木工の技術を磨いて独立を目指していました。しかし、町の業務に追われ、技術習得のための時間が確保できなかったこと、そして活動に必要な場所や道具の提供が十分に受けられなかったことから、独立を断念せざるを得ませんでした。

「移住者と自治体、双方のニーズを的確に捉え、最適なマッチングを実現する仕組みが必要です」と徳永さんは指摘します。

総務省の目標と地方の現実

総務省は、2026年度までに地域おこし協力隊員を全国で1万人に増やす目標を掲げています。しかし、応募者の減少やミスマッチなど、現場では目標達成への道のりは険しいのが現状です。

「移住促進」の光と影:地域おこし協力隊制度の現状と課題

衆議院選挙における各党の公約

今回の衆議院選挙では、各党が地方創生を重要な政策課題として掲げ、地域おこし協力隊の拡充や地方への移住促進策などを公約に盛り込んでいます。

しかし、移住者からは「抽象的なスローガンばかりで、具体的な支援策が見えない」という厳しい意見も聞かれます。

地方創生の未来に向けて

地域おこし協力隊制度は、地方の活性化に大きく貢献する可能性を秘めています。しかし、現状では多くの課題を抱えていることも事実です。

移住者へのきめ細やかなサポート体制の構築、自治体側の意識改革、そして国レベルでの戦略的な支援策の策定など、多角的な取り組みが求められています。

地方創生の未来は、地域おこし協力隊制度の成功にかかっています。関係者一人ひとりが当事者意識を持ち、より良い制度の構築に向けて積極的に行動していくことが重要です。