名古屋の2990万円リノベ住宅で入居直後から雨漏り…不動産会社は「結露」と主張、専門家が真相解明

近年、日本各地で欠陥住宅を巡るトラブルが後を絶ちません。特に中古リノベーション住宅では、購入後に予期せぬ不具合が発覚するケースが社会問題として注目されています。今回、名古屋市内に住む田中さん(仮名)も、2990万円で購入した自身のマイホームで、入居直後から深刻な雨漏りに悩まされています。売主である不動産会社は当初「結露や湿気」と主張し対応を拒否する中、住宅トラブルに詳しい専門家が調査に乗り出しました。この事例は、中古住宅購入における潜在的なリスクと、契約不適合責任を巡る不動産トラブルの複雑さを浮き彫りにしています。

初期トラブル:入居わずか3日で発覚した雨漏りの連鎖

田中さんが5年前に2990万円で購入したのは、築24年の3階建て4LDKリノベーション済み物件でした。しかし、入居前から外壁には「上の方を見ると剥がれたり膨らんできた」という劣化が見られ、塗装の剥がれやひび割れが進行していました。そして、入居してわずか3日という短期間で、2階のキッチンの窓から最初の雨漏りが発生。その後、半年を待たずにその隣の洋室の窓枠からも水滴が確認されるようになりました。

田中さんは「ここも雨漏りでこのように剥がれたりシミがあったり。入居した時はきれいな状態だった」と語り、雨漏りの影響で室内の壁紙が剥がれたり、広範囲にシミが広がっている現状に強い不満を抱いています。もはや「雨漏りしていない部屋がないくらい」の状態だというこの住宅は、購入時の期待を大きく裏切るものでした。

名古屋の欠陥リノベーション住宅の外壁剥がれとひび割れ名古屋の欠陥リノベーション住宅の外壁剥がれとひび割れ

不動産会社の「結露」主張と契約不適合責任を巡る問題

雨漏りの問題は深刻化の一途を辿り、入居から1年が過ぎた頃には、3階の窓、さらにはトイレや洗面室など、家中のあちこちで雨漏りが発生する事態となりました。

日本の法律では、宅地建物取引業者である売主には、中古住宅であっても引き渡しから2年間は雨漏りなどの契約不適合について責任を負う「契約不適合責任」が課せられています。田中さんはこの法律に基づき、売主の不動産会社に修理を求めましたが、同社は「雨漏りではなく結露や湿気だから」と主張。具体的な対応を拒否したといいます。不動産会社は「雨漏りというのはバケツとか受けていて、水が滴ってくる状態でなければ雨漏りとは言えない」と、その定義を厳しく解釈し、責任を逃れようとしました。

しかし、引き渡しから2年が経過した後の2023年10月、不動産会社はようやく雨漏り調査を実施。その結果、「その時点で確認できたのは3階北側窓付近からの水の侵入のみで、それ以外のものは”当該調査以降”に発生した不具合である可能性を否定できません」との回答にとどまり、田中さんの納得を得られるものではありませんでした。

雨漏りにより壁紙が剥がれシミができた名古屋の田中さん宅の室内雨漏りにより壁紙が剥がれシミができた名古屋の田中さん宅の室内

「住宅Gメン」による専門調査で判明した欠陥の真相

家中で雨漏りが起きているにも関わらず、水の侵入が1か所だけという不動産会社の調査結果に納得できなかった田中さんは、住宅トラブルに詳しいプロフェッショナル、通称「住宅Gメン」こと長井良至さんに助けを求めました。長井さんは一級建築士であり、施工不良が疑われる住宅の原因究明や業者との交渉を請け負う、この道の専門家です。

長井氏がまず着目したのは、最初に雨漏りが発生した2階キッチンのサッシの継ぎ目でした。売主側の調査では異常なしとされていたこの箇所を、長井氏は徹底的に調べました。長井氏の指摘によれば、「外壁材の表面がかなり傷んでいて、窓との境目に隙間が空いている」とのこと。サッシの継ぎ目にできた数ミリの隙間は、建物の防水機能で重要な役割を果たすシーリングが劣化し、切れていることが原因でした。

住宅Gメンの一級建築士・長井良至氏による雨漏り箇所の調査住宅Gメンの一級建築士・長井良至氏による雨漏り箇所の調査

その疑惑を裏付けるため、長井さんは工務店に依頼し、このサッシの継ぎ目に約1時間の散水試験を実施しました。結果は明白でした。散水開始からしばらくすると、部屋の内部に水が流れ込み始めたのです。長井氏は「(水が)出ていますね。この中に(水が)溜まっていますね。今2階の窓から水をかけて、外壁の中に入った雨がここから出ている。窓枠とか内側の下地材が腐ってくる」と、雨水侵入の経路と構造部材への影響を解説しました。木材の腐食が進めば「(窓枠は)ボロボロになって朽ちていく」という長井氏の説明に、田中さんは「何と言っていいのか…もうすごい…」と、絶望と怒りが入り混じった表情を浮かべました。

散水試験により雨水が侵入した窓枠内部の様子散水試験により雨水が侵入した窓枠内部の様子

結論:欠陥住宅問題への警鐘と専門家活用の重要性

今回の名古屋のリノベーション住宅における雨漏りトラブルは、中古住宅購入における潜在的なリスクと、不動産会社の責任逃れに対する消費者保護の課題を浮き彫りにしています。特に、目に見えない部分の欠陥や、雨漏り結露の判断基準を巡る業者との見解の相違は、多くの購入者が直面しうる深刻な問題です。

本件は、専門家による客観的な欠陥調査が、不動産会社の不当な主張を覆し、問題の根本原因を特定する上で不可欠であることを改めて示しています。購入者は物件の状態を詳細に確認するだけでなく、不審な点やトラブルが発生した際には、早期に一級建築士などの専門家へ相談することの重要性を肝に銘じるべきでしょう。また、契約不適合責任の期間と内容についてもしっかりと理解することが、同様の住宅トラブルを未然に防ぎ、自己の権利を守るための鍵となります。

参考文献

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