石破首相が提唱「アジア版NATO」は実現可能か? 現実に独裁国家が核の力で現状変更を考えている


■NATOとは何か

 世界を見渡してみると、いちばんうまく行っている集団安全保障の仕組みは、NATO(北大西洋条約機構)である。その仕組みと役割を考えてみる。

 イギリス、フランスはまもなく核兵器を保有した。そして、(北大西洋なのだからか知らないが)アメリカが入っている。複数の核保有国が束になっている。その団結の力で、ヨーロッパの西側諸国全体の安全を保障する仕組みだ。

 冷戦が終わり、ソ連は解体した。仮想敵国は、ソ連からロシアに変わった。そして、旧ソ連圏の東ヨーロッパの国々が続々NATOに加入した。NATOの東方拡大である。

 NATOの役割は、外敵に侵略されないこと。そして、加盟国同士が、互いに敵対しないこと。ソ連(ロシア)という共通の敵をもつことで、結束できた。NATOは、成功した集団的安全保障の仕組みである。ウクライナは、NATOに加盟していなかった。だから、ロシアが侵攻する余地があった。

 東アジアには、集団的安全保障の仕組みがない。東アジアにNATOにあたる、集団的安全保障の仕組みをつくることは可能だろうか。いうなればNPTO(北太平洋条約機構)のような。

 これは、むずかしいと思う。第一に、核保有国が(アメリカを除けば)いない。日本も韓国もフィリピンも、核をもっていない。台湾にもない。オーストラリアにもない。

 第二に、台湾はアメリカとも日本とも韓国とも国交がなく、国際的に孤立していて、集団的安全保障の仕組みに組み込むのがむずかしい。



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