ロシアへの派兵を認めた北朝鮮、しかし国内では報道規制
北朝鮮がロシアへの派兵を事実上認めました。しかし、国内メディアはこの事実を報じていません。朝鮮労働党機関紙の労働新聞や朝鮮中央テレビ、朝鮮中央放送など主要メディアは、26日になっても北朝鮮外務省副相による派兵に関する発言を一切報道していません。
北朝鮮外務省のキム・ジョンギュ副相(ロシア担当)は25日、朝鮮中央通信記者の質問に対し、「国際報道で話題になっている、わが軍の対ロシア派兵について留意している。もしそのようなことがあったとしても、それは国際法に則った行動である」と述べました。さらに、「それを違法だと主張する勢力が存在するだろう」と付け加えました。
派兵を明確には認めていませんが、合法的な措置であると主張することで、間接的に派兵の事実を認めた形です。
北朝鮮は昨年からロシアとの友好関係を強調してきましたが、命の危険がある戦場に国民を送り込んだという事実を公表することはできないと判断したのでしょう。
派兵の噂広がるも当局は情報統制を強化
北朝鮮国内では、ロシアへの派兵に関する噂が広がっており、当局は情報統制を強化しています。
韓国国家情報院は23日、北朝鮮が派兵軍人の家族を統制・管理するために、特定の場所に集団で移住・隔離していると国会に報告しました。
また、ロシアへの派兵を知った北朝鮮軍人の家族が泣き崩れたという情報も、北朝鮮内部から聞こえてきていると国家情報院は明らかにしました。
韓国国家情報院がウクライナ情報機関から入手したウクライナ戦線で撮影された写真に北朝鮮兵と推定される人物が昨年8月に金正恩氏に随行した北朝鮮のミサイル技術者と確認されたと明らかにした。[写真 韓国国家情報院]
情報統制の裏に隠された北朝鮮の思惑とは?
北朝鮮がロシアへの派兵を認めながら、国内では徹底した情報統制を行っている背景には、どのような思惑が隠されているのでしょうか?
専門家の間では、次のような見方が出ています。
- 国内の動揺を避けるため: 北朝鮮は経済状況が厳しく、国民生活は苦しい状況にあります。戦地に人員を送り込むことで、国民の不満が高まり、体制の不安定化につながることを恐れていると考えられます。
- 国際社会からの非難をかわすため: ロシアへの軍事支援は、国連安全保障理事会の決議違反に当たる可能性があります。派兵の事実を隠蔽することで、国際社会からの非難をかわそうとしている可能性があります。
- ロシアとの関係を有利に進めるため: 北朝鮮はロシアとの関係強化を図っており、軍事支援はその一環と見られています。しかし、派兵を公にすることで、欧米諸国との関係が悪化する可能性もあります。情報統制によって、ロシアとの関係を損なうことなく、自国の利益を追求しようとしていると考えられます。
北朝鮮の真意は不明な点が多いですが、今回の派兵問題を通して、情報統制というベールに包まれた北朝鮮の実態が改めて浮き彫りになりました。