「元祖」は維新だったのに…
前回の記事では、自民党・石破政権の混乱と衆院選の歴史的大敗にいたった背景について書いた以上、やはりこちらにも触れておかなければならないだろう。
どこよりも早く「社会保障費の持続可能性(医療・介護制度改革)」「社会保障の世代間格差」をトップイシューに据えて活動してきた日本維新の会が、今回の総選挙では目論見通り政治的争点にそれらが浮上したにもかかわらず、思ったほどの支持拡大に結びつかなかったばかりか、むしろ議席を減らしてしまった。
この結果を受けて、日本維新の会共同代表で大阪府知事の吉村洋文氏や、維新の創設者である元大阪市長の橋下徹氏、党参院幹事長の猪瀬直樹氏らが、相次いで馬場伸幸代表の責任を問う発言を口にしてもいる。
〈日本維新の会の吉村洋文共同代表(大阪府知事)は28日、衆院選の結果を受け、党代表選の実施を要求した。府庁で記者団に「大阪以外は完敗だ。実施するのが筋だ」と理由を説明。党内からも公然と馬場伸幸代表の責任を問う声が上がった。
衆院選で、維新は地盤の関西以外に支持が広がらず、公示前から5減の38議席と苦戦。目標に掲げた「野党第1党」の奪取には遠く及ばなかった。これを踏まえ、猪瀬直樹参院幹事長はX(旧ツイッター)に「馬場氏は敗北の責任を取るべきだ」と投稿。ただ、馬場氏は27日の記者会見で「われわれも与党過半数割れの一翼を担った自負を持っていい」と述べるなど、代表続投に意欲を示している〉(時事ドットコム「維新・吉村氏、代表選実施を要求 党内に馬場氏責任論」2024年10月28日より引用)
選挙戦に入った直後にとある維新の関係者に話を聞いたところ、今回の選挙戦で思いもよらぬ苦境に立たされたことに候補者も関係者もみな面食らっているようだった。
「ウチがどこよりも早く、社会保障問題や世代間格差を言い出して風を起こした自負があるのに、その果実をみんな国民民主党に持っていかれてしまった……」
――という恨み節も聞こえてきた。
愚痴を言いたくなる気持ちはわかる。実際のところ、いまSNSでも大きな盛り上がりを見せている「社会保障の世代間格差」の問題を国政レベルのイシューに押し上げようと奮戦してきたのは紛れもなく日本維新の会で、とくにいわゆる「東京維新」の人びとの尽力なしに語ることはできないだろう。東京組の有志が政策を練りあげて大阪組の幹部陣に具申し、今回の選挙戦を臨むにあたって最大のテーマに採用されたという顛末がある。
今回の選挙戦において維新の東京組は、街宣でも演説でも「現役世代、将来世代のために、社会保障制度を改革します!」とみな一様に訴えた。プランとしては国民民主党よりもずっと踏み込んだ改革案を提示していたといってもよいだろう。